赤い回転流の神
降臨描写 |
それは赤く、歪んで、いびつな形をぐるぐるという回転のままに好き放題に変化させながらあなたがたの前に降り立った。 金属めいたぎらぎらという反射光が目に突き刺さり、赤い回転流が静かに停止する。と同時に、その場に闇が射した。いや、闇ではない。 黒く巨大な物体が、夜の裾を広げるかのように赤い金属の乗り物から地に足をつけたのだ。 切れ切れの蒸気に似た存在は、質量保存の法則など知ったことかとばかりに人ひとりが乗れるほどの大きさの金属からぐうと体を伸ばす。 それは高く、高く、永劫にも思える高さで空を突っ切り。地面から生えた一本の槍の切っ先のようにあなたを見下ろした。 |
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特殊な行動:犠牲者の変容 |
黒く霧めいた存在に備わっていたのは、手などというものではない。もっと柔軟に、犠牲者を捕えるために最適化された塊と言えた。 蒸気めいてゆらめいているくせに、その質量は確かである。 無名のオールド・ワンは拘束着のように犠牲者を包み、開口具らしき影で唇の端が切れるほどに肉を割り開き、抗う術のなくなった人間の喉に向かって自分の身体を搾るような動きをした。 まるで、果実が自らの体液を垂らすように。 だがそこから搾り垂れてきたのは、果汁などという人間が食するに適したものではない。生臭く粘性のある樹液らしき浅黒い液体。 ぼたりぼたりと流し込まれたそれは、犠牲者の体にすぐさま変化をもたらした。 肌は樹木のように罅割れ、強張り固いものに変じ。頭皮からは緑の芽が伸び始める。 口からも目からもわさりと奇妙な動きで植物らしい茎が、葉がびっちりと生え。白目の下に根が潜り込みぐにゅぐにゅと角膜を盛り上げ今にも我が主に向かって飛び出さんとしているのがわかった。 |
致死描写 |
霧のように体が広がっていく。 その流れるような黒に包まれ、あなたは全身に激痛を感じた。 太陽の光が僅かに透過して見える。自分の身体がどうなっているのか目を落とした次の瞬間には悟ることだろう。 焼けただれてしまったのだ。いや、今も焼け爛れ続けている。現在進行形の痛みと苦しみは抗いようがないほどに全身を苛み、衣服があろうがどうあろうが構わず皮膚の上を這いずり回る。 悲鳴をあげようと口を開けた一瞬で霧めいた無名の神の体は体内にまで入り込み、食道を胃を肺を気管を口を舌を鼻を唇を目を皮膚を髪爪指骨肉血管内臓脳焼け脳脳脳死 無名の神が再び赤い回転流に乗り込んだ時、そこに残っていたのは腐食し果てた何かでしかなかった。 |