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監禁たる幸福の幸福幸福
幸なりなりなり幸
ゆえに監禁system:CoC6版

使用可能サプリ:CoC6版2010・2015
フローチャート 導入
14:納屋
1:廃屋(外観)
  2:玄関
    3:居間
    4:お手洗い
    5:脱衣所
    6:浴室
    8:夫婦の寝室
    10:勝手口
    7:キッチン
      9:階段
        11:二階・子供部屋
          12:押入れ
            16:エンディング

補遺 15:徘徊
   真相
導入 普段通り過ごすあなたの耳に、このようなニュースが飛び込んできます。

《先日起きた女児誘拐殺人事件の容疑者である青年Oが逃亡、行方不明となっていることについて、警察は青年Oを全国指名手配犯と指定することを発表しました。皆さんの広い情報提供を求めます…》

滅多に聞かない指名手配のニュースをどこか頭の片隅に留めながら、あなたがたは日常を過ごします。
そんなニュースが世間を賑わせてから数週間後。あなたがたは友人Nから、廃屋探検をしないかと誘われます。
なんでも街の中心部から外れた郊外に、ぽつんと一軒廃屋が建っているのだとか。そこにはお化けが出るという噂があり、友人Nは是非行ってみたい、でもひとりで行くのは勇気が出ないからという理由であなたを誘うのです。
あなたがたは友人Nに付き合い、真夜中に郊外の廃屋へ行ってみることにしました。

また、このシナリオは真夜中に行います。そのため万が一懐中電灯を失くした場合、目星に-25の補正がつきます。カメラのフラッシュでも代用が可能でしょうが、フラッシュが焚かれるのは一瞬のことであるためカメラのフラッシュのみの場合目星に-10の補正をつけてください。
NPC ・少女A
小学一年生後半という、希望に満ちあふれた年齢だった少女A。両親の死を受け止めるには、彼女はまだ幼すぎた。やってきた青年を大変気に入り、最後にはなついてよく笑うようになったが、ナイ神父からもらった魔術をともだちになる魔法だと思って使用。また自身も事故により死んでしまった。

・青年O
青年Oは不幸な男である。殺人犯として指名手配されていたが冤罪。ただ体が大きいだけの優しい男だった。監禁されても少女を傷つけるのは忍びないと脱出を試みていたが、やがて寂しさに潰されそうな少女に惹かれていくようになる。彼女と暮らそうと決め、静かに時間が流れ始めた頃に事件は起きたのだった。

・あなたの友人
友人Nはナイ神父ではないニャルラトホテプのひとりである。面白い反応を起こしそうな探索者を探し、ナイ神父の手によって引き起こされたこの不可解で悲しい惨劇を、ごく一般的な観衆として楽しもうと廃屋探検に誘ったのだった。もしKPが望むのなら、この友人Nをナイ神父と同一人物にしてもよい。その場合は彼らがこの遊びをするためだけにひとつの家庭を破滅させたことになり、よりいっそう救われなさが際立つだろう。

・ナイ神父
この家には彼の足跡がところどころ残されている。少女の両親が星の知恵派教団の狂信者だったのか、それとも気紛れにかの神がやってきたのかは今となってはわからないが、少なくともナイ神父が少女Aに接触し魔術を授けたということがわかる。

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死したる少女A
STR:0  DEX:0  INT:0  CON:0
POW:0  SIZ:10  APP:2
H P:0  M P:0  回避:0  ダメージボーナス:0
・呪文
『ゾンビの創造』
[所持品]
にっき
ナイ神父の十字架
[特記]
死んでいる。ただの屍のようだ。
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不幸の連鎖する青年O
STR:12  DEX:9  INT:6  CON:14
POW:10  SIZ:16  APP:2
H P:15  M P:10  回避:18  ダメージボーナス:+1d4
・武器
こぶし(50%) 1d2+db
・装甲
2ポイントのゾウのように固く厚い皮膚
[所持品]
少女Aからの手紙
[特記]
全身が肉瘤で覆われており、人間らしいのは四本の手足があるところくらいだ。顔もただれて人相はわからない。
HPが0にならない限り毎ターン1d6のHP回復
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思い出せないあなたの友人・N(名前は各KPで設定してください)
STR:8  DEX:7  INT:21  CON:8
POW:21  SIZ:10  APP:18
H P:9  M P:21  回避:14  ダメージボーナス:0
・技能
目星(60%) 聞き耳(40%) 忍び歩き(55%)
図書館(40%) 信用(75%) 言いくるめ(60%) 写真術(55%)
・武器
なし
・装甲
なし
[所持品]
高性能デジタルカメラ
強力懐中電灯
[特記]
NPCは探索者を廃屋の奥へ奥へと誘おうとします。いかにも好奇心で動いていますというそぶりを忘れず、終始わくわくした顔で廃屋を探索しています。もし探索者が帰ろうなどとするなら、彼は強く引き留めようとするでしょう。
このNPCは万が一探索者に暴力を受けた場合その正体を晒し、血塗られた舌へと変貌します。
血塗られた舌、月に吠えるもののステータスは(MM213p)を参照のこと
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廃屋MAP 初期MAP
1:廃屋(外観) 友人Nの案内で廃屋にやってきた探索者は、そこが想像以上に閑散とした草原の真ん中だということに驚きます。見渡す限り他に人の姿はなく、家の裏手には小高い木々がそびえ黒い影を落としています。
問題の廃屋は木材とトタンとモルタルで作られているように見えます。
打ち捨てられてまだそう年月が経っていないのか、トタンは錆び木材は古びていますが、致命的な老朽化には至っていないように見えます。
軽く見たところあなたがたの正面に玄関、裏手に勝手口があり、その奥に木造の納屋、手前に空の犬小屋が見えます。また、勝手口のところにゴミ袋の山が積まれているのがわかります。
勝手口は鍵がかかっているのかそれとも錆びついてしまっているのか、どうやっても開きそうにありません。玄関と納屋には鍵がかかっておらず、行ってみたいと思うなら簡単に行くことができそうです。


・主な使用可能技能
【聞き耳】で家の中からごとりという音がします。何かが偶然落ちたような音ではなく、生き物が動いたような音です。
【目星】でゴミの中身を見ることができます。その内容はほとんどがパンのビニール包装、コンビニ弁当の箱、カップラーメンのくずなどで構成されており、この家の住人がどんな食生活を送っていたのかをうかがい知ることができます。また、その中にくしゃくしゃに丸められた紙屑を見つけることができるでしょう。
紙屑には真っ赤な文字でこのように書かれています。
《いぬが しにました》
2:玄関 タイルのひび割れた玄関です。引き戸は鍵がかかっておらず、からからという音をたてて簡単に開けることができます。電気が通っていないせいか、電球が割れているわけではなさそうですが灯りはつきません。
玄関で耳を澄ませても、中はしんと静まり返っており、不気味な静寂が辺りに漂っているだけです。
引き戸を開けた右手には靴箱があり、中には女性もののべた靴、男性用のスニーカー、子供用の靴がきちんと収められています。

・主な使用可能技能
【目星】で靴箱の上に飾られている写真立てに気が付きます。写真には細身の女性、体格のいい男性、ランドセルの少女が並んで写っており、後ろには小学校の校門も見えます。ランドセルの少女の入学式の写真でしょうか。
3:居間 質素なテーブルとソファ、それにテレビの据えられた居間です。装飾品は全くと言っていいほどなく、床には紙が乱雑に散らばっており、どこか不気味な雰囲気を漂わせています。
また、壁に大きく黒っぽい文字で
《あ そ ぼ》《あそぶなにするあそぼあそぼあそぶまもるあそぶあそぶあそぶ》
とあります。不気味さを感じ、〔0/1〕のSAN値チェックです。
もしこの字に【医学】を振るのなら、この文字は血で書かれていることがわかるでしょう。
探索者が紙に興味を持つと文字が書かれた紙を見つけることができます。それには綺麗に整った字でこう書かれていました。
《彼女との監禁生活が上手くいきますように》

・主な使用可能技能
【聞き耳】で隣のキッチンからごとごとごそごそ音がするのを聞きます。音には水の滴るようなびちゃびちゃというものも混じっています。
【目星】で居間の柱に鎖が繋がれているのがわかります。鎖は途中で千切れており、ここに何かを繋いでいたということがわかります。また、柱には掻きむしったような跡があります。誰かが爪でこの柱を怖そうともがいたかのように見えます。柱には乾いた血もついており、血が出るほどに掻き毟った様子は明らかに通常の精神状態ではありません。
また、柱の真下に陶器の茶碗が落ちています。茶碗の中にはかぴかぴに乾いたご飯が入っており、ご飯の一部に青い粉のようなものが付着しているのもわかります。この粉を判別するには【医学】【薬学】が必要であり、その成分は現代の医療ではまだ知られていない未知の物質や幻覚作用のある精神刺激薬などで構成されているとわかります。
4:お手洗い 玄関から左に曲がったところにある、小さなお手洗いです。電気がつかないそこは薄暗く、微かに異臭がします。その理由は便器の蓋を開けてみればわかるでしょう。お手洗いは今時珍しい汲み取り式で、便器の内部はひたすら暗く深い穴が開いているだけなのです。

・主な使用可能技能
【目星】で汚れた床にくしゃくしゃの紙が落ちているのを見つけます。破れたスケッチブックが落ちたような雰囲気のそれは、クレヨンで書いたかのような字でこう書かれていました。
《おとうさん おかあさん いぬ》
文字の上には絵も描いてあり、そこにはぶら下がる黒い人影がふたつとその前に立つ男の影、そして右下には血を流したような犬の絵がありました。
5:脱衣所 洗濯ものが放りこまれた洗濯機のある脱衣所です。中にたまった衣服は小さな子供のものと、大きな男性ものの二種類のように見えます。 ・主な使用可能技能 【目星】で、脱衣所の壁に《かくれんぼみつける おにおにおにおにかくれんぼおにおれぼくみつける》とありました。不気味な文章を見つけてしまい〔0/1〕のSAN値チェックです。
6:浴室 壁に大きなヒビの入った浴室です。すっかり埃が積もっており、長い間使われていなかったことがうかがえます。

・主な使用可能技能
【目星】で窓の外に動く影を見つけます。暗さ、不気味さも相まってそれはあなたの心臓にぞっと冷たいものを差し込むでしょう。〔0/1〕のSANチェックです。
※KP向け情報。これはただ窓の外で野生動物が動いただけですが、追及したい探索者がいたなら再度の目星で動物を目撃させ、探索者に正体がわかった安心感を与えてもいいでしょう。
7:キッチン 不幸な青年Oと最初に遭遇する場所です。
キッチンの扉を開けると、ぐちゃ、ぬちゃ、という湿った音、それにごとりごそごそという何かが動く音が聞き耳をせずとも聞こえてきます。
キッチンに踏みこみ、そこにいる何かに懐中電灯を向けたあなたがたは気がつくでしょう。そこにいたのは肉塊としか表現しようのない、全身が醜く膨れ上がった何かだということに。そしてそれは人間らしくきちんとズボンとチェックのシャツを着て、しかしぶくぶくに膨れた肉に押されてぱんぱんになった衣服はところどころ破け千切れてしまっています。そうして人間擬きのこの肉塊は冷蔵庫から何かを掴んでは口らしき空洞にひっきりなしに物を運んでいるのです。
この哀れな異形を目撃した探索者は〔0/1d3〕のSANチェックです。

この異形を目撃すると同時に、NPCである友人Nは悲鳴をあげその場から逃げ出してしまいます。探索者が引き留めようとしても、NPCは強い力で探索者を押しのけ逃亡してしまいます。
また、その悲鳴に驚いたらしい肉塊と化した青年Oはぎょろりとこちらを見ると、逃げ出す友人Nを猛然と追いかけ始めます。これもまた同様にあまりにも強い力、そして素早い動きのせいで探索者は止めることができません。探索者が後を追うならば、9:階段へと移行してください。キッチンから出たすぐ傍に階段の正面がありますので、NPCがどこへ行ったのかわからなくても目撃する羽目になります。

・主な使用可能技能
【目星】であの肉塊人間が座っていた冷蔵庫の前に、くしゃくしゃに握り潰された紙が落ちているのを見つけます。すっかり腐敗した野菜や肉の傍に落ちているそれは、黒い丁寧な文字でこのように書いてありました。
《俺がきみを守るからね。必ず守るから》
また、同じ紙の裏側に全く違う子供の筆跡で、赤い言葉も書いてあります。
《いたくて くらいよ なぐらないで ごめんなさい》
8:夫婦の寝室 鍵のかかった部屋ですが、室内用の簡単な鍵ですので【DEX*3】または【鍵開け】で簡単に開くことができます。
室内はそこだけ時が止まったかのように綺麗に整頓され、埃こそ溜まっているものの他の部屋のような陰惨な状態とはかけ離れています。
ここは部屋の中央に位置するベッド二台と、枕元にスタンド、壁面にはクローゼット、それに小さな本棚があるだけの寂しい部屋です。それまで一切の灯りを拒んでいたこの家ですが、枕元のスタンドだけはセンサーの電池式なのか、あなたがたが室内に入るなりぽっと暖かな光を灯します。

・主な使用可能技能
【図書館】で本棚から数枚の書類を見つけることができます。至って普通のビジネス書や、お金の運用法など、妙にお金に関する本が多い中に隠されるようにしてその書類はありました。
また、書類の中には定期型死亡保険のパンフレットも含まれています。契約書類ではありませんが、ざっと斜め読みしたところ、急激かつ偶発的な外来の事故において保険金が支払われると書いてあります。
9:階段 通常状態ではなんの変哲もない階段に見えます。特記すべきところはありません。
しかし7:キッチンのイベントを終えた後、すなわちNPCふたりがあなたがたの前から逃げ出した後にこの階段でイベントが発生します。
突然どだだだだだ、と何かが落ちてくるような音がします。大きな黒い塊が階段に体を打ち付けながら落ちてきたような。あなたがたが何事かと見に行くと、ひどく息をのむでしょう。それはついさっき逃げ出したあなたがたの友人の変わり果てた姿。首が折られ、手足もあり得ない方向に曲がってしまっています。【医学】で完全に心肺が停止していることを確認できますが、そうでなくても明らかに死んでいるということがわかるでしょう。
友人のおぞましい死に様に〔1/1d3〕のSANチェックです。
また、死んだ友人を見た人間に対し、KPは【INT*3】の思い出しロールを振ってください。このダイスは隠しダイスで振るといいでしょう。
このロールに成功した場合、ふとこの友人の名前がわからなくなります。いや名前だけじゃない、顔、声、思い出。どこで出会い、どんな交流で仲を深めたのか。それらが全て、最初から存在しないようだ。この友人Nというのは今日という日に降って湧いた友人のような何かなのではという疑惑が生まれます。
この疑惑を抱き、そんな相手と仲良く談笑しながらここまで連れてこられた事実に、追加で〔0/1d2〕のSANチェックです。

※KP向け情報。このNPCの正体はニャルラトホテプです。思い出しロールはPC自身に振らせてもいいですが、NPCの正体に早急に勘づかれる恐れがあるため、できるだけKPの隠しダイスで振ってください。
10:勝手口 内鍵の閉められた勝手口です。外に出るための古いサンダルがふたつ脱ぎ捨ててあり、土埃が溜まって薄汚れています。

・主な使用可能技能
【目星】で勝手口の柱に、赤いクレヨンで小さく《だれもしらない ひみつきち わたしだけの やねうらべや!》と書いてあるのを見つけます。
11:二階・子供部屋 大量の画用紙で埋め尽くされた子供部屋です。
あまり広くない部屋の中に画用紙がびっしり撒き散らされており、大量のクレヨン画と、ちびたクレヨンばかり入ったケースが床に落ちています。

階段でのイベントを終えた後にこの部屋に到達した場合は、以下のイベントが発生します。
あなたがたが階段を上り終わると、子供部屋の中からぬちゃぬちゃ、うおおおんと湿った音や唸り声が聞こえます。閉じられた扉の向こうには一体何がいるのか。扉をおそるおそる開けると、中ではあの肉塊人間が唸りながら部屋の中を歩き回っていました。
探索者が肉塊人間に敵意を向け、戦闘を行うのならば通常の戦闘を行ってください。
もし様子をみるというのなら、じきに肉塊人間は部屋の奥にある押入れを唸りながら引っ掻き、それからのしのしとたったひとつしかない出入り口へ向かって歩いてきます。あなたがたとはちあう形になりますが肉塊人間に敵意はなく、何もなければそのまま階段を降りていくでしょう。
階段を降りた肉塊人間はそのまま徘徊の動きに入ります。徘徊の動きについては後述の《15:徘徊》を参照してください。
肉塊人間がいなくなった部屋には何事もなく入ることができます。暗い室内にはカーテンが引かれ、外からの光が入っていないのでますます暗く感じるでしょう。カーテンを開けると星灯りが微かに入り、先程よりはましだと思える程度です。
部屋には子供用の勉強机、赤いランドセル、それに畳の床いっぱいに画用紙とクレヨンがぶち撒けられています。奥には押入れのような襖もあります。


・主な使用可能技能
【目星】で、床に散らばる画用紙の中に特徴的な絵が描かれたものを見つけます。絵はどれもクレヨンで描かれており、作者の特徴なのか、どの絵にも一言文字が添えられています。
黒く塗りつぶされた絵には、赤い文字で《こわいよ》
チェックのシャツを着た人間と女の子の絵には《おにいちゃん わたし》
まるで鬼のような形相の顔がふたつある絵には《おとうさん おかあさん》
とあります。
12:押入れ まるで某ネコ型ロボットでも入っていそうな、古びた障子の貼られた押入れです。押入れを開けると、布団といくらかの服が入れられて、全体的にすかすかとした印象だとわかります。また、何か腐ったような、かびたような饐えた匂いが全体的に漂っています。

・主な使用可能技能
【目星】で押入れの中にカラフルなキャラクターの表紙がついたノートが落ちていることに気が付きます。ノートの表紙には赤いクレヨンで《ともだちのつくりかた》と書かれています。
中を見ると子供が落書きしたような文字でこのような文章があります。
《ともだちのつくりかた》
《1 あおいこなをともだちのごはんにまぜる》
《2 あかいくすりをのむ》←すっぱいからきらい
《3 おまじないをとなえる》

もし探索者が押入れの中で天井がどうなっているかを見るというなら、屋根裏部屋のヒントが出ていなくとも押入れの天井板が外れ、蛆虫のような白く小さいものがほんの僅か突き出ているのがわかるかもしれません。
13:屋根裏部屋 屋根裏部屋を発見する時、まずあなたがたは死んだ少女の指がほんの少しだけ開いた板から見えるでしょう。それは白く、蛆虫にも似て、あなたがたに不気味な気持ちを抱かせます。
屋根裏部屋に上がると、むっと強烈な腐敗臭があなたがたの鼻を襲います。酢を煮詰めたような、嘔吐をもよおす匂い。それは屋根裏部屋に横たわる、小学一年生くらいの女の子の死体から漂っていました。腐乱死体の発見に〔0/1d3〕のSAN値チェックです。
屋根裏にはかわいいクッション、子供用の小さな折り畳み机、クレヨンが何本か。それに腐ったパンが少し。いかにも秘密基地と呼んで差し支えない様子だとわかります。
また、腐乱死体の傍には《にっき》と大きくひらがなで書かれた本が転がっているのが嫌でも目につくでしょう。
にっきの内容は以下の通りです。

《いぬがしんだひに おにいちゃんがきました》
《おうちにとめてくれっていったから いいよっていいました》
《すこしまえから おうちには わたししかいません》
《だからとめてもだいじょうぶです》
《おにいちゃんはおうちをみてかなしそうなかおをして ごはんをつくってくれました》
《うれしかったです》
《おにいちゃんがねてるときに でていかないように いぬのくさりをつけました》
《おにいちゃんはここからだせっておこりました》
《おなかがすいたのでふたりでぱんをたべました》
《でていかないってやくそくしたから くさりをはずしました》
《おにいちゃんはやさしいです いたいことしません》
《へんなにおいがしたから なや をみにいきました》
《おにいちゃんが■■■■■■をみて てをあわせました わたしもそうしました》
《おにいちゃんはやさしいです どなったりしません》
《ともだちになりたいな》
《ひみつきちからおくすりをとってきて ごはんにまぜました》
《かっぷらーめんは おいしいです》
《おにいちゃんがねてるあいだに またくさりをつけました》
《おにいちゃんがすっごくおこったから やねうらににげました》
《あしたになったらごめんねってするけど ゆるしてくれるかな だっていっしょにいたかったんだもん》
《あしたになったら ともだち》

にっきはここで途切れ、続きはありません。

・主な使用可能技能
【目星】で少女の服のポケットにきらきら光るものを発見します。中に入っていたものは金色に輝く十字架でした。十字架は片手に収まるほどの大きさで、くしゃくしゃになったメモが一緒についています。
《ともだちと ばいばいする まほうのどうぐ》
この十字架を肉塊人間に使用する→TRUE ENDへ
14:納屋 鍵のかかっていない納屋は、隙間だらけでいかにもふきさらしといった雰囲気です。中は暗く、光源になりそうなものはなにひとつありません。しかし、納屋に入ると薄ら何かが腐っている匂いが漂っているのがわかります。奥には麻袋と道具箱が詰まれ、それ以外はだだっ広い空間が広がっています。

・主な使用可能技能
【目星】で天井からぶら下がり風に揺れる、二本のロープを目撃します。これはただ天井の梁に結びつけられているだけのただのロープに見えます。先端が輪になっているということもありませんが、これは死体を下ろす際に切られたためなので、探索者たちの嫌な予感は大まかに合っていると言えるでしょう。
【聞き耳】で腐った匂いはどこから漂っているのかを突き止めることができます。
腐った匂いは奥の麻袋から漂い、あなたがたの嫌な予感はまさしく的中します。麻袋に入っているのはとっくの昔に腐り果て蛆のわいた、ふたつの亡骸でした。うわっと押し寄せる腐臭と蛆たちに〔1/1d3〕のSAN値チェックです。
この死体はとっくに顔もわからないほど腐敗していますが、それぞれ男性と女性の服を着ていることは判別できます。もし死体の衣服を漁るなどすれば、女性のポケットからぐしゃぐしゃに丸められた紙が出てくるでしょう。それは小学校で使うようなマス目のついた紙で、下手くそな鉛筆文字が書かれています。
《わたしのおとうさん、おかあさん わたしのおとうさんとおかあさんはおしごとがいそがしいです。いつもがんばってます。きょうは父の日だから、ありがとうっていいます。でもほんとはもっといっしょにいたいです。おしごとがんばってくださ■■■■■■■■■■■■》
後半部分は黒く汚れて読むことはできません。
15:徘徊 二階・子供部屋で遭遇した肉塊人間を攻撃せずに見送ると、そのまま徘徊行動に入ります。徘徊を行う肉塊人間は廃屋内のまだ探索者が発見していない情報のある場所を探る、叩く、その場で唸るなど探索者にその場に何かがあると思わせる行動をとります。
未発見情報が複数ある場合、肉塊人間は一定時間で次の情報がある場所に移動を行い、また探索者に知らせる行動をとります。
未発見情報がない場合、肉塊人間は居間に座っているか再び冷蔵庫の中を漁っています。
16:エンディング 肉塊人間を殺す、または廃屋を逃げ出すことでいかなるタイミングであれエンディングに移行します。

TRUE END【ありがとう】

・肉塊人間を十字架で殺す
肉塊人間の目の前に黄金に輝く十字架を突きつけると、肉塊人間はまるで心得ているかのようにぎょろ目を瞑り頭を差し出し、探索者が握る十字架に自分自身を押しつけます。すると、なんの変哲もない十字架がまるで焼きごてのように赤く発光し、肉塊人間の頭に十字の焼け焦げをつけます。不思議なことに十字架を持つ人の手にはなんの温度も感じられませんが、たったそれだけで肉塊人間はその場に倒れ伏し、そのままぴくりとも動かなくなります。
その死に顔は穏やかで、醜く膨れ上がりながらもまるで眠るようだと言えるでしょう。
肉塊人間を殺した探索者の足元には、強く握りしめられて皺の刻まれたかわいらしいピンク色の封筒が転がり、肉塊と成り果てた彼が最後まで離さなかった唯一の所持品をあなたがたは読むことができます。
それは、あの屋根裏で寂しく腐っていた少女Aからの手紙でした。
《いっしょにいてくれて ありがとう おとうさんもおかあさんも わたしのこときらいだっていうけど おにいちゃんはすきだっていってくれたから わたしはおにいちゃんのこともっともっとすき》
あなたがたが死んだ友人Nの死体を回収しようとした場合、不思議なことにその死体はどこにもありません。その代わり、最後にNが横たわっていた場所に一枚のカードが置いてあります。
《お化け屋敷は楽しかったか? 友人N》
夜はやがて朝を迎え、この暗く闇に閉ざされた家も温かい陽射しに照らされていきます。
荒れた廊下には擦りガラスの玄関からの日光が優しく射し、隙間だらけの納屋にも、カーテンの閉じたキッチンや居間にも、そして天に一番近い屋根裏にも。等しく暖かな光が降り注ぎ。あなたがたは廃屋の一夜を越え、再び日の当たる日常へと帰っていくことでしょう。
あなたがたが帰宅する途中、あなたがたはラジオや街頭のテレビでこのようなニュースを聞くことになります。
《先日起きた女児誘拐殺人事件について、昨夜真犯人と名乗る男が出頭、自供したことが明らかになりました。これにより警察は指名手配とされていた男性Oの指名手配を取り下げると共に、冤罪であったことや事実関係の説明として本日午後●時から謝罪会見を行う予定です…》
おめでとうございます、帰還成功です。帰還報酬として1d10の正気度を獲得してください。



GOOD END【廃屋は沈黙する】

・肉塊人間を探索者の攻撃で殺す
肉塊人間はあなたがたの手により倒され、その場に崩れ落ちます。体中にぼこぼこと生えた肉袋から血とも膿ともつかない汚らしい混合物が流れ出て、床にじくじく染みを作っていきます。
肉塊人間を睨みつけるあなたがたは、そこで気がつくでしょう。この体液にまみれた床の上に、汚れてしまったピンク色の封筒が転がっていることに。
それには子供の汚い鉛筆文字でこのように書いてありました。
《いっしょにいてくれて ありがとう おとうさんもおかあさんも わたしのこときらいだっていうけど おにいちゃんはすきだっていってくれたから わたしはおにいちゃんのこともっともっとすき》
あなたがたが死んだ友人を回収しようとした場合、友人Nは前と変わらずその場に無残な死体として転がっています。しかし、彼の身元などは全くわからないため、探索者は死体の処理に困ることになるでしょう。
この陰惨な廃屋から帰宅するあなたがたは、ここで起きた事件を警察に通報するかもしれませんし、止めておくかもしれません。いずれにしろ、後日このようなニュースが流れることになります。
《●日前、●●の一軒家にて死体が発見され、警察は自殺と事件の両方で捜査を…》
おめでとうございます、帰還成功です。残念ながら帰還報酬を得ることはできませんでした。



ESCAPE END【弱虫め】

・肉塊人間をそのままにして廃屋から逃げ出す
あなたがたは死体となった友人の姿に強い恐怖を覚え、廃屋から逃げ出してしまいました。しかし廃屋の玄関を開けた瞬間に、
「この弱虫め」と声がかかります。
それは死んだはずの友人の声。折れた首を肩の上にごろんと乗せた友人が、暗い廊下からあなたがたを見ているのです。そしてあり得ないほどの高い声でけらけら笑いだすと、折れた手足をぶらぶら揺らしてこちらに向かってゆっくり歩き始めるのです。歩いていくうちにその皮はべろりと剥げ、内側から押されるように目玉が落ち、内臓や骨の更に内側から赤黒い肉の塊を露出させていくのです。
血塗られた舌の出現により、〔1d10/1d100〕のSAN値チェックを行い、あなたがたはその場から逃げ出すことができます。
あの恐ろしい一夜のことは強く脳裏に刻まれ、一体なんだったのかと疑問を抱きながらも日常へと帰っていくことができるでしょう。
おめでとうございます、帰還成功です。残念ながら帰還報酬を得ることはできませんでした。
真相 小学生の少女Aによる青年O監禁の末起きた不幸な事件。
彼らはごく普通の家族だった。小学生になったばかりの少女Aは周囲からの孤立と借金苦により首を吊った両親を目撃してしまう。
飼っていた犬も餌不足と病気に倒れ、彼女はひとりきりで僅かな食料と残った小銭で生活しはじめた。
そんな中、ある人物が家に泊めてほしいとやってくる。それは誘拐殺人犯として指名手配されている青年だった。
少女は寂しさから見知らぬ青年を家に招き、共に食事をするようになる。彼女は男が殺人犯だということも、逃亡していることも知らなかった。
ひとりぼっちの寂しさから、少女は眠っていた青年を犬の鎖で繋いでしまう。監禁されたことに気が付いた男は最初こそ恐怖を覚えていたが、だんだん互いに興味を持ちふたりは仲良くなっていった。
家にあったなけなしのお金で買いものをして、カップラーメンやパンなどを食べ、鎖も外されることになる。
青年ともっとともだちになりたいと願った少女は、以前『しんぷさん』から教えてもらったともだちを作る方法を実践する。しかし、それは人を化物に変えてしまう魔術だった。
準備をし、青年が逃げないように再び鎖をつけた少女。しかし起きた青年は再びの監禁の恐怖に怒り狂い、少女を怒鳴りつけてしまう。
少女は怒りだした青年に恐怖を抱き、自分のひみつきちである屋根裏に逃げ込んだが、最後の呪文を唱え終わった後、不安定な足場で転び、頭を強打して死んでしまう。
こうして家には化物と化した青年Oと、死んだ少女A、そして死体の両親や犬だけが取り残されたのだった。

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