system:CoC6版
導入 |
『オービタル・シップカンパニーが提供する、究極の旅。漆黒の宇宙に散らばる、宝石の星々を体感する3日間がここに』 あなたの目の前には、そう書かれたチラシと、『おめでとうございます。あなたはオービタル・シップカンパニー提供の宇宙旅行に見事当選されました。日程は……』などという事務的な文章が書かれた紙があります。どうやら、先日なにかのきっかけで応募した1名きっかりの宇宙旅行招待券に当選したようです。 まさかという思いで紙をひっくり返してみますが、確かにそこには自分の名前が書かれています。 一生に一度、行けるかどうかというこのチャンス。 あなたは仕事も学校も放りだして、宇宙旅行へと旅立つことにしました。 持ち込めないもの:刃物、火薬、薬品、その他危険物一般 カメラはハンディサイズまで可 スマートフォンは宇宙空間では圏外となります。ご了承ください。 |
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NPC |
・添乗員・Laika Laikaはオービタル・シップ社の添乗員として勤務する女性です。(KPが望むなら性別は変更しても構いません) 職務に忠実であり、宇宙人などは信じていない現実主義者です。 彼女に抱える秘密などなにひとつなく、探索者同様にただ現状に巻き込まれ、なんとか打開しようと藻掻く一般人です。 ・シャッガイからの種族(シャン) かつての惑星シャッガイを知る、老いたシャン。 人間を殺戮することを楽しみとする若きシャンに比べ全体的に能力は弱り、積極的な殺戮行動も(コスト節約の意味で)控えている。 老いは如何なる生命をも等しく孤独に連れて行く。 ・ザイクロトルからの植物 シャンのペット。人間と交流する自我はない。 NPC能力値――――――――――――――――――――――――――添乗員・Laika STR:8 DEX:10 INT:15 CON:11 POW:12 SIZ:11 APP:16 EDU:20 H P:11 M P:12 回避:20 ダメージボーナス:0 ・技能 母国語:ロシア語(100) その他の言語:英語(75) その他の言語:日本語(70) 目星(65) 聞き耳(50) 信用(80) 応急手当(50) こぶし(65) ・武器 なし ・装甲 なし [所持品] カードキー(紛失中) 携帯救急セット(応急手当の回復値に+1) [行動指針] Laikaはオービタル・シップ社の社員としてお客様であるあなたを無事に地球へと帰すことを使命としています。 また、同様にオービタル・シップ社の損益になりそうなことは非常に嫌がり、拒否します。 シャンと対峙した時のLaikaはひどく取り乱し、何が何でも害虫を駆除して地球へと帰還しようとします。 ―――――――――――――――――――――――――― 星の迷子・シャッガイから来たる種族 STR:2 DEX:31 INT:17 CON:2 POW:24 SIZ:1 H P:2 M P:24 回避:62 ダメージボーナス:該当せず 移動4 飛行40 ・技能 機械修理(99) 電気修理(99) 天文学(60) 隠れる(50) 忍び歩き(50) ・武器 神経ムチ(50) ・装甲 なし [所持品] 神経ムチ ムチという名だが、青白い光を照射する道具。これに当たった人間はシャンのMPとMP対抗を行う。 シャンが勝つと対象はのたうちまわり、神経ムチのスイッチが切られるまで行動不可となる。 シャンが敗北しても対象は苦痛に襲われ、〔24-CON〕時間の間、全ての技能に-20補正がつく。 これも神経ムチのスイッチが切られるまで続く。 [行動指針] シャンの欲求はただひとつ、今は無きシャッガイへと帰ることである。 惑星シャッガイは今や宇宙の塵となっているが、このシャンは数世紀にも及ぶ寿命が間もなく尽きることを悟り最期は星で死にたいと願っている。 そのため、人間の脳に宿ることや拷問を用いた神への信仰心は既に薄れ。ただ帰郷の念にばかり囚われている。 この小さく老いた昆虫にとっては、今や大いなるアザトースに期待することは何もない。数世紀に渡る長い生命の旅路の終わりは間もなく来るのだろう。 また、昆虫にとっては邪魔をする人間はただの障害物である点にも留意すること。 十数年にもなる宇宙の旅の道連れに、自分と会話のできる知的生命体が共にあることをシャンは喜び、エンドAを選択した探索者には親切にするだろうが、自分と敵対する相手に容赦することは一切ない。 ―――――――――――――――――――――――――― 知性なき肉食植物・ザイクロトルからの怪物 STR:40 DEX:12 INT:2 CON:34 POW:10 SIZ:40 H P:37 M P:10 回避:24 ダメージボーナス:+5d6 移動8 ・武器 触手(50) db÷2+組み付き効果 丸のみ 組み付きに成功している場合自動成功 1ターンにつき5d6ダメージ ・装甲 8ポイントの皮膚 [行動指針] この、特に知性のないザイクロトルからの怪物はシャンの命令を忠実にこなす。 ―――――――――――――――――――――――――― |
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1-a:客席・事故前 |
旅行の当日。 事前訓練も終え、同伴するのはいかにも金持ちらしき人々ばかり。英語、中国語、ロシア語……各国の言語が飛び交う中、あなたも緊張しながら席につくでしょう。 間もなく発射の合図。 機体はゆっくりと上を向き、ジェットコースターに乗るような体勢をとります。 緊張の中辺りを見回せば、誰も彼もがごくりと生唾を飲みこみ。いかな人間でも最先端の体験、未だ見果てぬ宇宙へ旅立つという経験に心が浮き立っているのを感じるでしょう。 3、2、1、0…… カウントダウンと共に轟音が轟き、空中へと浮かんでいく体。同時に襲い掛かる重力。 地球から解き放たれるまでの時間、しばしあなたは必死に重力に押しつぶされないよう体に力を籠め。ひたすら目を瞑り、全身にかかる荷重を感じることでしょう。 やがて、ふと。全身が軽くなるのを感じます。 重力から解き放たれた体は羽のよう。浮きたつ心臓がどきどきと胸を打つのがわかり、一瞬の沈黙の後。客席前方のモニターに。ぱ、っと。漆黒の空間に浮かぶ仄明るい青の球体が映し出されました。 あれが、地球。 慌てて首を捻り、横にある窓を見れば。そこには確かに広がっているのです。 どこまでも、どこまでも果てのない。いっそ心細い心地にも、暖かい闇に包まれる安寧の心地にもなる、宇宙の姿。 それは写真やビデオで見るものとは全く違い、確かに触れられそうな質感を備え、空間であるというよりも分子に、光に、闇に。満たされた海であるようにさえ感じました。 あなたが窓から見える宇宙に夢中になっていると、ぽーん、と音がします。そしてあなたがたの前に客室乗務員の格好をした女性が現れました。 彼女は深々と一礼すると、あなたがたに向かってこう話しかけます。 「本日は、オービタル・シップカンパニーをご利用いただき誠にありがとうございます。わたくしは皆様のお世話をさせていただきます、Laikaと申します。何かご用がございましたら、なんなりとお申しつけください」 彼女はその後、このように言葉を続けました。 「現在、当機体は地球の大気圏を出て、衛星と同じ静止軌道上にてゆっくりと周回しております。皆様にはこれより3日間、くつろぎながら宇宙空間で生活していただき、その後地球へと帰還する予定でございます。現在、重力は1G。これは地上と同じ重力場を作りだす装置によるもので、後程無重力体験の時間も設けさせていただいております。客室には映画、カードなど各種娯楽も取り揃えております。どうぞごゆっくり、宇宙の旅をお楽しみくださいませ」 挨拶を終えると、彼女ともう一人のスタッフが乗客へドリンクを配り始めました。 現在地は客室。まるで飛行機のファーストクラス座席のような椅子はふかふかとして、後ろに倒せば一人で眠るには十分な広さのベッドになるようです。全ての座席が窓際に面し、中央の通路はゆったりと空けられて、そこでレクリエーションを行うのだろうと予想できました。 ・主な使用可能技能 【目星】で、窓の外にちらりと銀色の何か丸く平べったいものが見えるのがわかります。それは一瞬あなたの視界に入りますが、すぐに引っ込んでしまいました。何か異物が存在している。微かに過る不安と期待に、〔0/1〕のSANチェックです。 【聞き耳】で、前方の人がつけたモニターからオービタル・シップ社のCMが流れてくるのが聞こえます。明るい声の女性が、宇宙開発技術について熱く語っていました。 『……オービタル・シップカンパニーが使用するこの技術は宇宙ステーションでも実際に使われており、尿を加熱再分離して純水だけを取りだすことで完全循環、いわば永遠に水を確保することが……』 つまらなくなったのか、モニターはそこで切られてしまいました。 星々は煌めき、圧倒的な質感と生命の輝きをもってあなたの眼前にあります。宝石箱をびろうどの布の上でひっくり返して並べたような、子供じみたわくわくがあなたの胸を占め。 いつまでだって見ていられそうなほどに、この神秘と深淵は手に届く場所に。 しばしながれる穏やかな時間。あなたは座席に備え付けられたモニターで、内臓の映画を見ることも。流行りの曲を聞くことも。ここよりはるか遠い宇宙へ思いを馳せることもできるでしょう。 |
1-b:客席・事故後 |
あなたがゆったりくつろいでいると、突然、ばきり。という何かが割れるような音が響きます。 何事かと思った一瞬の後、ビーーーーーーーッというけたたましい警報がシャトル内に鳴り響き。 反応する暇が与えられることもなく、ばぁん!という破裂音、消える電灯、がきがきばきんという何かが壊れるようなけたたましい音。 悲鳴、怒声、混乱の声が響くと共に。あなたの後頭部にも鈍い痛みが起き。 何かが頭に落ちてきた。その認識だけを残し、あなたの意識は恐怖と混乱の中ブラックアウトしました。 ……目を覚ます。ちかちか火花が散るような視界と、後頭部にぐらぐらする痛み。体を起こせば、電気は回復しているようでした。 あなたの目の前に飛び込んできたのは、明らかな惨状。 壊れた壁、剥き出しの配線、焦げ臭い匂い、鉄さびの臭気。 剥がれ落ちた分厚い内壁の下からはどろりと血が流れ出し、その下に何があるのかなど考えたくもないでしょう。 呼吸をするたびにここにまだ酸素がある安堵と、むっとえずきそうな血の匂いが肺に侵入してきます。 事故が起きたのだ、と悟ると同時に。あなたは異常なものを目にします。 まるで配線に根を張るように、びっちりと伸ばされた植物状の何か。丸く平べったい葉体じみた銀色の手を広げ、それはうぞうぞと動いているのが見えます。 植物の幹に押された壁がばきばきと音をたてて剥がれ、あなたはこの事故の原因を知るでしょう。それは明らかに地上に存在する植物ではない、意思を持つ動きをして後部へと腕を広げていきます。 この宇宙空間に現れた脅威と、その異様な形態に〔0/1d6〕のSANチェックです。 植物はあなたには興味がない様子で、積極的にこちらに攻撃することはありません。しかし探索者が植物を傷つけたなら、それは報復とばかりに平べったい円状の葉であなたに対して1ダメージの攻撃を行います。 シャトル後方の扉は植物めいたクリーチャーによって大きく歪まされており、役にたたなくなった金属片としてそこに転がっています。奥にはまだ植物に侵食されていない部屋が二部屋ほどあるのが見えるでしょう。 シャトル前方の扉は多少歪んでいるものの、上手く植物がそこを避けたのか無事のようです。しかしこちらにはカード認証タイプのロックがかかっているとわかるでしょう。 ・主な使用可能技能 【目星】で倒れる人々の中に最初に挨拶してくれたLaikaがいるのがわかります。彼女は頭から血を流し、目を固く瞑っていますが、胸は微かに上下しています。気絶しているだけのようです。 【聞き耳】でシャトルの前方から悲鳴、それに発砲音が微かに聞こえるのがわかります。鍵のかかった分厚い扉の向こうで、しばらく争うような物音が聞こえた後。最後に何か潰れるような音がしたと思えば、辺りは静まり返ってしまいます。 【機械修理】または【電気修理】でケーブルの通る壁を見れば、この謎の植物は配線に根を張るように内壁に侵入し、しかしそのお陰で内壁こそ崩れたもののシャトルの命綱である重要なケーブル類は無事であるとわかります。外壁に穴が開いているということもなさそうです。 【生物学】で植物をよく見れば、それは地上にあるどの植物とも違う、脈打つ金属のような体をしているとわかります。葉緑体は見当たらず、その代わりに筋肉のような拡張と収縮を繰り返す線維が外皮の下を走っているようにも見えます。 【クトゥルフ神話技能】を使用すれば、この奇妙な植物が《ザイクロトルからの怪物》であるとわかるでしょう。彼らは遠き星シャッガイからの昆虫により使役される奴隷種族として知られており、知性はなく本能で動く存在だということもわかります。 ひととおり部屋を調べ終わる、もしくはLaikaを起こそうとするのなら、彼女は呻きながらも意識を取り戻します。彼女は怪我こそ負っているもののさほど深い傷ではなく、ゆっくり頭を振って立ちあがることができるでしょう。 辺りの惨状を理解した彼女は、「地球にある本社に救難信号を送ります」と言って前方のドアに駆け寄りますが、ドアは緊急ロックされており、更に悪いことに鍵を取りだそうとした彼女は顔を覆ってしまいます。 緊急ロックを解除するための鍵を紛失してしまったのです。恐らく事故の際にどこかへ落としてしまったのだろうと彼女は言いますが、これは探しても見つかることはありません。 途方に暮れる彼女から聞き出せる情報は以下の通りです。 ・シャトル前方のスタッフルームに通信設備があるので、そこで地球と連絡が取れる。 ・シャトル前方には船外に出るための気密室、お客様に食事をお出しするための調理室、ランドリーや浴室などの水場、メンテナンス器具や通信設備などを備えたスタッフルーム、それに操縦席がある。 ・シャトルの乗組員は操縦士2人、メンテナンススタッフ2人、客室乗務員2人の計6人。 ・シャトル後方にはエンジンルームと酸素生成装置OGSや水のリサイクル装置などが置かれた試験室がある。 ・この事態には心当たりがない。これまで何度か宇宙旅行を催行しているが、初めてのことだ。 |
2:エンジンルーム |
あなたが恐る恐る突き破られた扉から後方へ進むと、そこは客室とは打って変わって武骨なつくりをした場所でした。 明らかにスタッフが立ち入る場所といった雰囲気の、装飾を取り払った場所。奥では巨大なエンジンがごうんごうんと音をたて、損傷なく動作しているのがわかるでしょう。 中に入った途端、ここでも人間の内側をひっくり返したかのような異様な悪臭がします。 血と、胆液と、酸の匂い。出どころはどこかと辺りを見回せば、それはいともたやすく見つかるでしょう。 壁に打ちつけられた、人間らしき影。それは宙にぶらりと手足を放り投げ、だらりと腹から臓物を垂れ流し。そしてあなたがたは見てしまいます。 顔もない人影。いや、ないのではない。それは確かにそこにあったはずだったのだ。 人の顔を、はらわたを。 むしゃむしゃと齧る。あの銀色の植物から生えた、歯のある口さえなければ。 それは銀色の植物の幹からぱくりと口を開け、まるで手であるかのようにスタッフの体を押さえつけ、むしゃり。むしゃりと肉を齧り取っているのが見えます。 内臓はそのほとんどが齧りかけであり、鋭利な歯で削ぎ取られた傷口からは体液なのか何なのかわからない液体がとめどなく滴っていました。 あまりに悲惨な結末を迎えた死体を目撃し、〔1/1d3〕のSANチェックです。 もぐり、むしゃりと植物が死体を咀嚼するたびにそれは揺れ、かちん、と音がして死体の足元に一枚のプラスチックカードが落ちてきます。 それを見たLaikaはあっと声をあげるでしょう。あれが前方の扉を開けるキーだと彼女は知っているのです。 死体は体のどこかを食われるたびにゆらり、べしゃりと壁で体を揺らし。物言わぬ肉は冷たくその場に垂れ下がっているのみです。 ・主な使用可能技能 【忍び歩き】【隠れる】【跳躍】などこの場に適していると思われる、主に足を使った技能によって素早くプラスチックカードを回収することができます。 成功すればあなたはダメージを受けることもなく回収できますが、失敗した場合は新しい獲物の気配を悟ったザイクロトルの怪物により1d3のダメージが食らわされます。 ダメージをくらってもくらわなくても、あなたはカードを入手することができます。 カードはつるつるとしており、ICカードのようなものだとわかります。前方を塞ぐ扉に翳すだけで鍵が開きそうです。 獲物が遠ざかる気配を感じたザイクロトルの怪物は、あなたを深追いしようとはせず、既に捕獲した獲物を食べることに執心するでしょう。 【目星】でザイクロトルの怪物を観察すれば、銀色の体がところどころ枯れたように変色しているのがわかるでしょう。変色した部位はまるで血管を伝うように筋として広がっているのが見えます。 ここで3:試験室で取得した《枯死剤》を使用するのであれば、ザイクロトルの怪物の口の中に放りこむのが最も効果的でしょう。 怪物は枯死剤を放りこまれて飲みこむと、もがき苦しみ全身が枯れるように茶色く変色していきます。やがて怪物は腐ったような匂いを放ち動かなくなってしまいます。 |
3:試験室 |
試験室の扉は半開きになっており、船の振動に合わせて静かに揺れています。入ろうとすると、Laikaが生きていた場合何かと理由をつけてそれを阻止しようとします。 試験室はオービタル・シップカンパニーの育成試験中の苗木が多く積まれており、客船として催行しているこの船での試験は適当ではないことだからです。 彼女に対しては【言いくるめ】や【説得】などの交渉技能の半分の値に成功することが必要でしょう。 また、彼女が既に死亡している場合は誰も止める者はいません。鍵もかかっていない試験室には易々と入ることができます。 中に入ると、中には巨大な縦型の装置。それに数段にも重なった植物工場のような棚がありました。 紫色の光が照射されたそこには、何かの植物の苗が綺麗に整列しています。 装置には《OGS》や《SFOG》といったペイントがされており、これらの使用法はLaikaに尋ねれば答えてくれるでしょう。これらは酸素生成装置であり、どこにも損傷がないことが見てとれます。 あなたがたが辺りを見回していると、やがて床に広がる血に気がつくでしょう。血の伝う先を見れば、そこには頭から血を流し静かに横たわる男の姿がありました。 近くには血がべっとりとこびりついた金属の棚があり、その角に頭をぶつけて亡くなったのだろうということが推測できるでしょう。 ・主な使用可能技能 【目星】または死体をまさぐることで、男の背面にひどい打撲痕や何かに齧られたような痕があることがわかります。また、男の手には《使いかけの枯死剤》が握られています。 枯死剤は液体状であり蓋が開いています。僅かに零れてはいますが、大半はプラスチック容器の中に入ったままです。 |
4:ランドリー・浴室・トイレ |
前方の扉にプラスチックカードをタッチすると、扉はがちゃんという重い音をたてて開きます。 植物らしき怪物によって多少歪められていますが、きしきし擦れる音がある程度で問題なく開閉できるでしょう。 前方の廊下を開けたあなたはうっと顔を顰めるでしょう。そこは全体の壁が剥落し、剥き出しになった植物の幹がびっちりと天井や壁を這っているのです。 どくりどくりと脈動するそれは今にも襲い掛かってくるような臨場感を備えており、不用意に近づけば何が起きるかわかりません。 枯死剤を使用した後であれば、この廊下には力を失ってぐしゅりと落ちた植物の幹がびっちり配線に絡まっているのが見え、その生々しい死に様は機械だらけの場所に妙に浮いて見えることでしょう。 ここにはドライランドリーとシャワータイプの浴室、ユニットトイレがあり、水回りが一極に集まっているのがわかります。 また、室内に入ったあなたがたはひどい血の臭いに顔を顰めることでしょう。 そこには想像した通り、人間の死体。Laikaと同じ制服を着た客室乗務員の女性が、ぐったりとランドリーに背を預け半ばほど千切られた首をぶらぶらとさせて座りこんでいました。 彼女の表情は恐怖に歪み、絶望の中死んでいったとわかります。 ・主な使用可能技能 【医学】で彼女の死因である喉元の切り傷は破損した金属片やあの植物めいた怪物の捕食によるものではないと断定できます。もっと別の、ナイフに似た何かによって殺害されたと判断できるでしょう。 【目星】で彼女の手にうすく透ける何かがぐしゃぐしゃの欠片となって握られているのが見えます。かさかさとしたそれは、乾燥した透明な葉のようにも見えるでしょう。これは【博物学】または【生物学】で何かの昆虫の翅の欠片だとわかります。 |
5:調理室 |
調理室の扉を開けると、そこには壁が破壊され、ぼろぼろになったキッチンがありました。 食器や食料の缶などは大きく跳ねのけられ、床に転がっています。 大型のチャンバーはつくりがしっかりしているせいでしょうか、扉に凹みは見られるものの特に荒らされた様子はありません。 このシャトルで生活する全員ぶんの3日相当と見られる食料がしっかり積んであり、最低限の調理ができるような設備が整っているのが見えるでしょう。 ・主な使用可能技能 【目星】で、この調理室に散らばる食料の中に食われた跡がないことに気が付きます。どれも跳ねのけられただけで、何かに食われた様子はありません。 |
6:スタッフルーム |
スタッフルームに入ると、地球にある通信基地と交信するための通信設備、それに緊急脱出装置が備え付けてあります。 どちらも壊れた様子はありませんが、どういうわけか通信設備のスイッチを入れたとしてもざらざらという雑音が入るばかりで連絡が取れる様子はありません。 また、それと同時に脱出装置も動かないことがわかります。何かの要因でロックがかかってしまっているのか、操作手順の通りに動かしても動作しません。 ・主な使用可能技能 【機械修理】または【電気修理】でノイズやロックの原因を探ることができます。 どちらの機械も、この宇宙船が使用しているものよりも強い電磁波のようなものに阻害されていることが原因で誤作動を起こしているのだとわかるでしょう。 原因を取り除けば問題なく動作しそうです。 ※KP向け情報。この強い電磁波はシャンの出す脳波です。シャンの脳波を止めるというのは、即ちシャンを殺すことにもつながるでしょう。 ある程度室内を探索すると、がくんと機体が大きく傾き、どこかへと向かう様子を見せます。Laikaが生きていた場合、彼女は大きく悲鳴を上げるでしょう。「地球の周回軌道を離れていく!」と。 彼女にはこの動きが正常なものではなく、船は墜落または遠い宇宙へ向かって舵をきったのだと判断できるのです。 |
7:気密室 |
気密室の扉は大きく破られ、そこから植物が生えているのが見えます。 無理矢理体をねじ込んだらしい植物によって、頑丈な金属の扉にはそこらじゅう亀裂が走り、とても気密室としての使用はできないとわかるでしょう。 しかし、外へと繋がる扉は全く無傷であり、このまま触らなければひとまず問題はないとわかります。 |
8:操縦席 |
《枯死剤》を使ってザイクロトルの怪物を枯れさせていない場合、操縦席への扉はザイクロトルの怪物によって塞がれています。 Laikaは操縦席がザイクロトルの怪物によって塞がれていることにショックを受け、今すぐ引き剥がさないといけない、操縦士が死んだら地球に帰るのは絶望的だ、と言って手近な植物に手をかけます。 彼女が植物に触れた瞬間、それは目も鼻も耳もないというのに正確に自分に触れた人間を感じ取り、操縦席を塞いでいた巨大な葉を振り上げてLaika目がけて振り下ろします。 それはあまりに一瞬の出来事。あなたが反応する暇さえなく、彼女の体は床に叩きつけられ首はねじ曲がり白い骨が皮膚から突き出すのが見えるでしょう。 先程まで自分と行動を共にしていた人物が殺されたことに〔1/1d3〕のSANチェックです。 ザイクロトルの怪物は彼女に向かって葉を振り下ろし、元の場所に収まった時には先程まで塞がれていた操縦席への入り口が半分ほど開けた状態になっています。 全く知性を感じられない様子、決して敵に回してはならない野生動物がこの場に存在することにぞっとしながらも、あなたは操縦席へと侵入することができます。 ザイクロトルの怪物が枯死しているならば、操縦席の扉は開け放たれています。あなたはLaikaと共に中に入ることができるでしょう。 あなたが操縦席に飛び込むと、そこには異様に小奇麗で損傷一つない室内。血を流し床に倒れ、明らかに死亡しているとわかる操縦士がふたり。 そして大きなモニター前に翅を畳んで留まる一匹の巨大で異形な昆虫がいるのが見えました。 猫ほどの大きさもあるその生物は、明らかに生理的嫌悪感を催す姿をしていました。 巨大な顎。その下から巻きひげのようなものが生え、甲虫のそれらしき艶やかな羽に細い線を描いて見えます。 その頭部は通常の昆虫に比べて何倍も巨大であり、六つに別れているのも外部から見て取れます。 この常識では考えられない生命体と接触し、〔0/1d6〕のSANチェックです。 操縦席に入って来た探索者の反応によって、シャンのとる行動が変化します。 すぐに虫を殺そうとするなら、シャンもまたあなたの殺気を受けて飛び立ち、戦闘に入ります。 あなたが室内に入ってそれ以外の反応だった場合、シャンの留まるモニターにかちり、かちりとゆっくり文字が入力されていきます。 【コロサ ナイノ ?】 シャンの不気味な両眼はあなたをじっと見つめており、明らかにこちらへ問いかけるような文字はどのような技術なのか、この昆虫が入力しているのだと察することができるでしょう。 シャンと会話するのであれば、以下のような情報が得られます。 ・宇宙船を襲ったのはシャン自身の意思である。この船に潜んで地球を脱出し、そのまま船を奪うつもりだ。 ・宇宙船にはザイクロトルの怪物を潜ませている。銀色の肉食植物で、船の内壁を壊したのはそいつだ。 ・船員は自分を見るなり武器を手に襲ってきたので殺した。 ・殺されないのなら殺すつもりはない。自分の目的は船だけだ。 あなたがシャンへの質問を終える、もしくは何故船が必要なのか問えば。 シャンはその感情の読み取れない、そも感情表現が人間のものとは明らかに違う体で。巻きひげをくしくしと足で擦りながら。顎をかちかち言わせながら。ぎこちない入力で、このような文字をモニターに映し出しました。 【ホシ ニ カエリタイ】 【ホシ ニ】 【ホシ ニ カエリタイ】 【カエリタイ ……】 Laikaはシャンに対して怯えと殺意を向け、彼女が生きていた場合エンドAへ移行することは難しいでしょう。 シャンを殺すのであれば戦闘に、殺さないのであればエンドAへと移行します。 戦闘に勝利→エンドB 戦闘に敗北→エンドC ※戦闘に入る際、ザイクロトルの怪物が生きていた場合シャンはザイクロトルの怪物をけしかけてきます。あなたは無謀な戦いに挑むことになるでしょう。 |
9:エンディング |
エンドA【N=R*fp*ne*fl*fi*fc*L】 あなたがシャンと共に宇宙船に残る決断をすると、シャンはかしゃりかしゃりと文字をモニターに打ち込みます。 【アリ ガトウ】 【ヒトリ ハ サミシイ】 【ウチュウ ハ ヒロスギ テ ダレニモ アエナイ カラ】 【フタリ ハ ウレシイ】 シャンは静かにその場を飛び立つと、宇宙船を脳波で操りながら船の環境を整えに行きます。 かつて宇宙旅行を繰り返し地球へと辿りついたシャンが生きるのにはほんの僅かの条件が整えばよいでしょうが、人間であるあなたが生きるためには数多くの条件が必要です。 水、食料、空気、温度。幸いにして人間はそれらを宇宙で再現するために、小さな地球を作るために必要な装備を船に積んでいました。 あなたはこれから長い長い旅をするのでしょう。人間には辿りつけぬ最果てを、人間でない者と共に目指すため。 青く煌めくガラスの星を通り、ひどく巨大な恒星を脇に見て、まるで滝のように中央から水を噴き出す新星に胸躍らせ。 あなたの時間は緩やかに、しかし確実に進みます。足腰が立たなくなり、腕を上げるのが億劫になり、そうしてやがて、あなたの隣にいるあの昆虫さえも、その翅を震わせるのをひどく重たげにする時代に。 あなたの眼前、広いガラスの窓から見えるのでしょう。 緑色の太陽がふたつ。その周囲に巡る星々と、今は無き星屑の空洞を。 漆黒の空はただただ輝き、あなたがたの眼前には宝石をびいどろにひっくり返したかのような。遠く静かに煌めく光景が永遠に広がっていました。 年老いた昆虫が、あなたにも伝わるようモニターに文字を打ち込みます。 【タダイマ】 【アレ ガ シャッガイ ノ ボヒョウ】 静かに、静かに漂う冷たく暗い惑星シャッガイの破片を、かつてあった彼らの母星を感じながら。あなたの目蓋はゆっくりと落ちていきました。 おやすみなさい。 船は静かにシャッガイの破片に着地し、あなたがたは僅かに残るその重力に身を委ね。緑色の二つの太陽に見守られながらその息を引き取るでしょう。 誰にも知られぬ地を墓標にし。あなたはロストしました。 エンドB【人はそれでも宇宙に夢を見る】 ぐしゃりとシャンが崩れ落ちると同時に、ザイクロトルの怪物も動かなくなります。シャンの脳波で指令されていただけの植物は、獲物を食ったことでそれ以上の攻撃を止め消化に務めはじめることでしょう。 眼前には、遠くへと広がる宇宙。 あまりにも恐ろしく、美しいその景色を目に焼き付けながらあなたはスタッフルームへと向かうでしょう。 あなたがスタッフルームに入ると、地球からの通信がけたたましいほどに入っています。 『こちら管制室。応答せよ、応答せよ……』 数か国の言語で繰り返されるメッセージ。あなたが聞こえてくる母国語にほっとしながら通信のスイッチを入れ、現在の状況を伝えると地上からはすぐに救援が送られるでしょう。 幸いにして、船にはあなたが数日生きるのには全く問題ない品々が積まれています。 救援の船に引っ張られて地上へ落ちたあなたは、奇跡の生還者としてテレビで放送されるでしょうが、オービタル・シップカンパニーの責任問題へと人々の興味はすぐに移っていき。再び平穏な生活を取り戻すことができます。 おめでとうございます、シナリオ生還です。 1d10+1d6の正気度を得て、あなたは遠い宇宙から帰ってきました。 エンドC【静かなる朱の船】 あなたの視界は朱に染まり、床へと崩れ落ちるでしょう。 人間とはわかり合えない、異星の存在。それは敵対するあなたを冷たく見下ろし。 ぐしゃり。 やがて、船は舵をとります。遠い、遠い。今は無き惑星シャッガイへと。 おやすみなさい。あなたはロストしました。 せめて、満点の星にその亡骸が癒されますよう。 |
真相 |
ある年老いたシャン、惑星シャッガイへの帰郷の念に駆られたシャンがザイクロトルの怪物を連れ、あなたがたまたま乗船したシャトルに侵入した。 彼らは気密室を内側から破り、操縦席に侵入し宇宙船を乗っ取ろうとしたのだ。 彼らと共に宇宙へ旅立つか、それとも彼らを下して地球へ帰るか。選べるのは、生きている者だけ。ただそれだけのシンプルな事実が真相だった。 |