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system:CoC6版

使用可能サプリ:CoC6版2010・2015
KP難易度:★☆☆☆☆
 シナリオ中の秘匿情報、トビコミタイ通過済PLである必要がある点に注意

フローチャート HO1秘匿情報
HO2秘匿情報
MAP

導入
1:シャッター
2:駅員室
3:電光掲示板
4:トイレ
 5:2Fホーム
  6:エンディング

真相
補遺・変質する都市伝説
HO1秘匿情報 ◆HO1:
あなたは『トビコミタイ』という都市伝説を知っている。
池の淵、交差点の縁石、屋上の端、電車の来るホーム。そういった、いかにも人が身投げしそうな場所に綺麗に揃えられた靴が置かれており、耳元で「トビコミタイ」と囁く声がする。ただそれだけ。
しかし怪談は更にこう続く。
『トビコミタイ』の話を聞いた人間は、次のターゲットにされてしまう。『トビコミタイ』は噂から噂へ憑りつき、仲間を求めているのだろうか。この都市伝説を知った人間を死に追いやる。 事実、あなたに『トビコミタイ』の噂を教えてきた友人は、三日前に謎の投身自殺をはかり。現在も意識不明のまま入院している。
あなたは、次に死ぬのは自分だと知っている。

***
シナリオ中、このHOに触れるようなキーワードや会話を聞いた場合はすぐに【アイデア】を振り、成功したならHO1は以下の内容を追加で思い出します。
例:HO2からの自身の死についての告白、三日前に投身自殺を図った友人が誰なのかという追及

◆HO1の追加情報:
あなたは、思いだす。それは、噂を聞いた記憶。誰かがトビコンだ記憶。そして今も入院しているはずの友人の記憶。
しかしそれはまるで記憶を曇らされているかのようにおぼろげで、確かに親しい友人であるはずの相手の顔も名前もまるで思いだすことができないという事実だった。
HO2秘匿情報 ◆HO2:
あなたは、死んだ。
三日前、電車を待つホームで突然「トビコミタイ」衝動にかられ、そのまま飛び込み自殺をしてしまった。
引き摺られる体。嗤う何か。……あなたは自分が死んだことを理解している。
しかしどういうわけか、友人には自分が見えているらしく、普段通り接してくる。友人は自分が死んだことに気がついていないらしい。
あなたは知っている。そろそろ別れの時間だと。今日は前々から約束をしていた、ふたりで出掛ける日。
何も知らない友人と、最期のこの時をふたりっきりで、遊ぶことにする。
※あなたは現在ロスト状態にはありません。通常通り技能を使用したり物を持つことができます。シナリオ終了時のエンディングにより、ロストかどうかが確定します。

***
シナリオ中、このHOに触れるようなキーワードや会話を聞いた場合はすぐに【アイデア】を振り、成功したならHO2は以下の内容を追加で思い出します。
例:HO1には三日前に投身自殺した友人がいる、トビコミタイという都市伝説の概要

◆HO2の追加情報:
あなたは、思いだす。トビコミタイ、という噂。その噂を聞いた人間を死に誘い、自殺させる呪われた都市伝説。
あなたは思いだす。その噂を、HO1に面白半分に伝えたことを。そして、この駅で都市伝説に負け、衝動のままに投身自殺してしまったことを。
最後の記憶は電車に引き摺られる体、血塗れの車体、それきりだった。
MAP トビコミタイ・駅構内MAP
導入 あなたがた二人は、前々から約束していた通り、少し遠くへ出掛けることにしました。とはいっても、電車一本揺られるだけの小旅行程度のもの。
※どこに出かけるかはPLに任せて構いません。どこにも着けないのですから。

HO1のみ描写:日常の異常

久しぶりにふたりっきりで出掛けることに浮かれるHO1は、しかし。ふと視界の端に妙なものを見てしまいます。
靴。 綺麗に揃ったスニーカーが一足、ぽつんと。交差点に今しがた飛び込んだ誰かに置いていかれたかのように。縁石の上であなたを待っているのです。
どこもおかしなところはないはずの光景。あれだって誰かが置いただけ、そうに決まっている。あなたの願いを押しつぶすように。
「トビ」「トビ コ ミ」「ト ビコ ミ タ ィ」「トビ コ マセテ」
大勢の人間が囁く、脳に直接流し込まれるような声を聞き、〔0/1d3〕のSANチェックです。
ぞっとする声を振りきるようにもう一度縁石を見れば、しかしそこには何もありません。歩道の向こうにはただ車がごうごう走っているばかり。


時計を見ればまだ朝。ゆったりとした時間が流れ。目的の電車の時間までは、少し間があるようです。
ちらほら開店しはじめた駅近くの商店街。セレクトショップや、フラワーマーケットが並ぶ通り。駅を目指して歩くお二人の前に、ふと見えたのは真黒な猫。
威風堂々として逃げる様子を見せぬ猫は、あなた方を見て一声、にゃーおと鳴き、HO1にすり寄って甘えてきます。
しかし、同様に猫はじいーっと見つめるようにHO2を見てきます。猫は例えHO2がどれほど構ったとしても。ただHO2をしげしげと見つめ、触れられる前に逃げてしまいます。
もし猫と触れ合うのであれば、そのふかふかさに1d2のSAN値回復です。
やがてあなたがたの前に地元の駅が見えてきます。売店がひとつ、自動販売機がひとつ、自動切符売り場に自動改札機がある。至って普通の駅です。

・主な使用可能技能
【目星】で辺りを見渡せば、この駅はどこにでもあるような至って普通の駅だということがはっきりわかります。
それと同時にこのような張り紙が、申し訳なさそうな隅っこにぺたりと張ってあるのを見つけるでしょう。
《お詫び (3日前の日付)、発生しました人身事故により全線において遅延が発生しましたことをお詫び申し上げます。》
【聞き耳】で多くの人が行き交う中、女子高校生がきゃいきゃい噂をしているのが聞こえます。
「なんか最近、人身事故多いよね」「投身自殺?迷惑ー」「そういえばさあ、知ってる……?最近流行ってる噂。これは友達の友達から聞いたんだけど……」

HO1のみ描写:幻聴

HO1が【聞き耳】に成功した場合、多くの人の囁きがこそこそひそひそと異様に耳につくように感じます。
脳をくすぐられているような、虫が這いずり回っているような不快感は次第に大きくなり。
「トビコミタイ」「トビコミタイ」「トビコミタイ」「トビコミタイ」「トビコミタイ」
そんな言葉が何重にも重なり、周囲の人間たちが唱和しているにも感じ──。
は、と我に返った時には、そこにはただざわめく人間の群れがいるだけでした。
脳をくすぐる幻聴に〔0/1d2〕のSANチェックです。


【聞き耳】に成功した場合、【図書館】を振ることもできます。
【図書館】に成功すると、あなたはスマホでトビコミタイの噂を検索することができるでしょう。
《知ってはならない噂、トビコミタイ。
名前だけがひとり歩きしているこの都市伝説の発端がどこなのかはわからないが、この噂の内容を知った者は恐怖のあまり自殺してしまうらしい。
鮫島事件や牛の首と同じく実体のないジョーク都市伝説であるとも、噂の真実を知ってしまった人間が全員死んでいるため誰にも全容が知られていないとも言われている。》

目的地までの料金を確認し。改札を通った瞬間、再びあの声がしました。
「トビ コ ミ タ イ」
ぞ、っとするそれが聞こえたと思えば、ジリリリリリリ、と警報が鳴り響き。
続いてガシャーン!というけたたましい金属音と共に駅の広い出入り口にシャッターがすごい勢いで下ろされました。きっとあそこにいれば挟まれて死んでいただろう、そう思えるほどの勢いで。
駅員に、と見回すも。気がつけば辺りには誰もいません。天井の蛍光灯が暗く明滅し、しんと静まり返った駅舎。辺りは異様な雰囲気に包まれます。この異常な現象に〔1/1d2〕のSANチェックです。
あなたがたの正面にはトイレ、脇には駅員室、背後にはさきほど閉まったシャッター、頭上には電光掲示板。そして階段を上がったところに電車が来るホームがあるとわかります。

HO2のみ描写:幻覚

どこにでもある駅舎のはずだった、ついさっきまでは。
しかし、今やあなたの目に映るものはとてもただの駅舎とは呼べません。
壁に。天井に。床に。
まるで菌糸が根を広げるように、まるで鉄板で熱されたかのように。びっしりと一面に肉や骨や皮が張りつき付着しているのです。
それは脈打つかのように一定のリズムで膨らみ、萎み。何か大きな生き物の表皮であるかのようにも見えました。
異様な駅舎内の様子に〔1/1d2〕のSANチェックです。


探索可能箇所:シャッター・駅員室・電光掲示板・トイレ・2Fホーム
1:シャッター シャッターは大きく歪み、何か肉色の物体を押しつぶそうとして壊れたように見えます。
片側だけが異常にひしゃげ、掴んでも動きません。シャッターの底には誰かぶくぶくに膨れた人間らしき死体が挟まっているのが見えました。
HO2のみ描写:肉

シャッターの全面にはみっちりと。
まるで助けを求めるかのように大勢の人間の手や皮膚や肉が貼りつき、焼けただれたように赤っぽく崩れ透明な体液でてらてらぬめっているのが見えます。
この奇怪な物質を目撃し、〔0/1〕のSANチェックです。


もしシャッターに触るのなら、どろり崩れた肉が指を包みこもうと蠕動するのが見えるでしょう。
死体を引っ張るもしくは触るなどして干渉すると途端に煤けた臭いがし、このような合成音声めいた声を聞くでしょう。
『コレより ご遺体ヲ炉にお入れ致しマす』
声が聞こえた瞬間、死体がぶすぶすと煙を上げ燃え始めます。
それはシャッターの向う側から火をつけられたようにも見え、ぐずぐず嫌な臭いを撒き散らしながら燃え落ちていきました。
シャッターには死体の形に黒く焦げた穴だけが残り、ねっとりと鼻孔に焼き付く甘ったるい死臭が漂っています。
鼻が曲がりそうな嫌な臭いに、〔0/1〕のSANチェックです。
薄暗い穴の中からは、むっと熱気が伝わり。穴を覗けばしくしくという泣き声がどこからか聞こえてきました。

・主な使用可能技能
【目星】で穴の向こうには真暗で広い空間が広がっていると観察できるでしょう。
空間の底にはちらちら赤い火らしきものが見え、何かが燃えているのがわかります。また、燃え落ちた死体のものでしょうか。大部分が焦げたメモを拾い上げることができます。
《■■■……ひとつだけ■かったこと■ある。死者は■者を■んでいるんだ。■から逃れようとして、ずっとできないでいるだけなんだ。だからって俺まで■■やめろ■るな■■■……》
【聞き耳】を使用すると奥からこのような声が聞こえてきます。
「トビコ ミ タィ」「ト ビコメ ナイ」

⇒穴に潜りこむのであれば、エンドAに到達します。
2:駅員室 ガラス窓から覗いた駅員室は無人のようでした。
扉には鍵がかかっておらず、どこにでもありそうな古い扉は簡単に開きます。壁には《飛び込み防止強化月間》というポスターが貼ってありました。
駅員室の中には業務用のノートや筆記具が乗った机、落としもの箱、電話、画面が真黒になったパソコンなどが置いてあるのも見えるでしょう。

HO2のみ描写:駅員室の扉

駅員室の扉は元々そこに書かれていた何かを塗り潰すように、血がぶちまけられめちゃくちゃに汚されていました。


駅員室に入ろうとすると、脇の掲示板に何かの書類がぎっしり貼ってあるのが見えます。
それは多くの人間の顔写真と日付、そして《駅にて飛び込み》《屋上より転落》《川へと身投げ》などの文字が添えられています。
そんな中でひときわ異彩を放つのは、端に掲示されたこの書類でしょう。
《人身事故報告 正田あつし 7歳 ■月■日午後■時 駅ホームからの転落による事故死
発見状況 終電間際のホームから子供が落ちるのを数人が目撃するものの運転士が見落とし、あつしくん死亡。
ホームには子供用の靴が綺麗に揃えられて置かれていた》

正田あつし、と書かれた掲示物は端がぐずぐずに腐り、あなたがたが見ている前でぐしゃりと腐食し床に落ちてしまいました。

※これらはトビコミタイによって食われた犠牲者の写真や名前です。
もしHO2が自分自身のものを探したいと宣言したなら、あつしくんの書類からもっとも遠い端に、真っ白な紙が貼られているのを目撃するでしょう。
これはHO2が手に取ると、まるで自分の遺影を持ったかのような嫌な感覚に襲われます。HO2のみ〔0/1〕のSANチェックです。

探索可能箇所:机・落とし物箱・電話

2-a:机
机にはごく一般的な筆記具や業務ノートが置かれており、まるで今しがたまで人がここにいたかのように書きかけのまま放置されています。
ぱらぱらとノートを捲ると、一枚の真新しい書類が挟まれているのを見つけます。
書類にはこのようにありました。
《人身事故の対処:運転士は飛び込みを認めた場合ただちに非常停止措置を行い、各所への通報を行うこと。
救助、回収はゴム手袋を装着し、即死とわかる場合であっても五体のパーツがあるかを確認すること。
ご遺体は全て揃えて遺族へ引き渡し、荼毘にふされることとなる。》
書類の端にはこのようなメモもありました。
《最近飛び込みが多すぎる。洗浄だって大変だっていうのに。こんなに多いんじゃ火葬場はフル回転してるだろうな》

2-b:落とし物箱
落とし物箱の中には焼け爛れたオモチャの電車や、焼け焦げた画用紙が無造作に突っ込まれていました。
紙面の大半が焼け落ちてしまっている画用紙には黒い電車の絵が描かれ、裏側にはこのような文字がありました。
《しょうらいのゆめ でんしゃ》
《もう電車は来ない。苦しい。苦しい。ばらばらにされた。お前のせいだ。苦しい。助けて。お前も苦しめ》

文字はそれぞれ、上は子供が書いたらしいクレヨンのもの、下は明らかな血文字と様子が違うのが伺えるでしょう。

HO2のみ描写:落とし物箱

落とし物箱には、焼け焦げたような手形がべたべたとついていました。


2-c:電話
電話をかけようと受話器を持ちあげると、受話器からは
「トビコミタイトビコマセテトビコミタイトビコメトビコミタイトビコミタイトビコモウトビコミタイ」
という声が流れ出します。不気味な声を聞き、〔0/1〕のSANチェックです。
見れば、今時珍しい据え置き型の電話の電話線はぶっつりと千切れ、ぶらりぶらりと断面を宙に晒していました。
受話器からは沢山の人間の呻き声が、小さく反響して聞こえたような気さえしました。
3:電光掲示板 電光掲示板を見上げると、このような文字がぴかぴかと光っているのが見えました。
『次の電車は 電車は 電車は 43両 でんしゃ でんしゃ 』
あなたがたが見ている前で、文字はかしゃりと変化します。
『次の 次は 44両 電車 発車いたしません せん せ んんんん』
4:トイレ ごくごく普通のトイレでは蛍光灯がちかちか明滅し不気味な雰囲気を漂わせています。
手前には割れた鏡の並ぶ手洗い場、奥には個室がありました。
鏡を見れば、割れた鏡の中に辛うじてこのような文字が見えました。
《たすけ■■すけて嫌■飛び込みたくない■にたくない嫌だ熱い熱いよ■えるなんでまだ死んでない嫌だ火が来るなんで■げたのに熱い あ ぁ 》

HO2のみ描写:トイレ

トイレの床中に、クレヨンで描いたカラフルな線路に見える絵が見えます。
緑、青、黄色、と楽し気な色合いで描かれた線路の上には真っ赤に塗りつぶされた人間の手足がバラバラに描かれ、床一面にバラバラ死体が散らばっている心地になるでしょう。
出口近くの線路からは矢印も引かれ、それはホームへと続く階段を指しているように見えました。


・主な使用可能技能
【聞き耳】で、奥の個室からごぼ、ごぼ、と水が詰まった音が聞こえてきました。
個室に入れば、そこにあったのはぶよぶよとした肉の塊、としか形容できないもの。いや、正確には、こう言わねばならないのでしょう。膨れきった水死体と。
水を吸い切って膨れ上がり今にも破裂しそうな水風船となったそれは、しかし確かに手足が二本、頭らしき突起が一つ。
便器にしなだれかかるような格好でどろりと座るそれは、あなたが個室を開ければ白濁した目をそちらにぎょろりと向け、ごぼごぼ水を吐き出しながら濁った声を発し始めました。
「トビコミタイ……トビコマセて、ぇ……」
辛うじて人型を保っているそれは、しかしその言葉を発すると共に吐き出す水に赤を混じらせます。
吐き、えずき、吐き、吐き、吐き、吐き、どろどろと、だくだくと。
その体がしぼみ骨と皮になるまでに水で溶解した内臓も血液も全てを嘔吐し全てを床にぶち撒けると、くしゃりと紙のようにしなびて動かなくなってしまいました。
あなたの足元にまで体液の海が広がり、〔1/1d3〕のSANチェックです。
【医学】でこの異常な死体の鑑別を行うことができます。
死体は少なくとも死後数日経っており、水を吐き出す様子から生きながらにして水に飛び込んで死んだと考えられるでしょう。
その他外傷はなく、この死体は入水自殺としか考えようがないとわかります。

あなたがたが個室から出ると、突如蛍光灯が瞬き、一瞬暗闇が訪れます。暗闇の中、あなたがたは聞くでしょう。
ガシャーン!どぼんバキバキバキぐちゃり、という。様々な何かの破壊が一緒くたにされたような音を。
ぱっと蛍光灯に再び灯りが戻った時、目の前に広がっていたのは凄惨な光景でした。
ばらばらに千切られた人体が床に広がり、零れた内臓が植物の根のように広がり、壁には肉片が叩きつけられ、洗面台にも誰かの指や鼻や顎がぐちゃぐちゃに乗せられています。
それは一人分ではありえない量で、転がった数個の目玉があなたがたをじろりと睨みつけていました。
立ち込める死の匂いに〔1/1d2〕のSANチェックです。
5:2Fホーム ホームに到達してからは行動によるイベントの連続になります。
暗い階段を上がり切った先、ホームの天井から見える空は真っ暗で太陽も月も見えません。
階段の両壁は黒く煤けており、手をつくとべっとりと灰なのか炭なのかわからない物質があなたの手を汚します。
線路があるであろう場所すら暗がりに沈んで何も見えず、ホームの向こうはただ黒に塗りつぶされていました。
のっぺりとした暗闇の中、ぽつぽつ立っている電灯の光があなたがたの不安を煽ります。
暗がりの中、電光掲示板は最早意味をなさない文字列を出たらめに表示しているのが見えます。あなたがたがホームへと足を進めると、ふと風が吹き、どこからか一枚の紙が飛んできました。
それは端が腐食した画用紙であり、表には手を繋ぐ黒い人影とこんな文字がありました。
《でんしゃはれんけつ じゅんばんじゅんばん ながいでんしゃをつくるためのるーる とびこんじゃったら つぎのひとをさがしましょう》
また、裏面には腐りかけた血の色で子供らしい文字が書かれていました。
《このよと あのよが つながるところ でんしゃはそこでつくります ぼくがいないとぜんぶばらばら このよからとびこんだらあのよにばいばい あのよから■び■■■ら■■■■……》
端は腐食し、読み取ることはできませんでした。
あなたがたが画用紙を見終わると、スピーカーから濁った放送が聞こえ始めます。
『デン電車電車が電車電車デデデデデシャ 参りマセン』
明らかに狂った音声が鳴り響いたかと思うと、プァーーーーーン…と電車が通過するような警笛音。
そしてあなたがたの髪や服をはためかせるほどの風が巻き起こり、しかしホームの先の線路には何も出現することはありません。
空洞に風が吹きあなたがたが驚くうちに。ぐしゃり。闇に何か落ちる音がします。
それはずるり、血を這いずる音をさせ。べちゃり、湿った音を響かせ。電灯に照らされるあなたがたの元へとゆっくり寄ってくるのがわかります。
やがて照らされたそれは、白い死人の肌。割れた爪先と、ずる剥けた肌と、滴る血。折れているのだろう足はぎこちなく動き、ぐらつく胴体に乗った首と頭。
あなたがたの前にやってきたそれは、HO2と全く同じ顔をして。しかし死人めいた肌と血で、にたりと笑い。こう言いました。
HO2「トビ、コ、ミ、タィ」
見せつけられた現実の姿に、〔1d2/1d8〕のSANチェックです。

SANチェック後、最終イベントに入ります。
嗤う怪異。しかし、それは一人ではなく。死人に気をとられている間に、HO2の足ががっと何者かに捕まれます。
死人の温度がぞっと足首から伝わり、そちらを向けば。全身をどろりと朱に染めた人間らしき肉が裂傷からだくだく体液を零しながら肘で這いずってくるのです。
死んだHO2がこちらへ這い寄ってくる中、あなたがたは聞くでしょう。ばしゃり、べちゃりという音を。
はっと辺りを見回せば、不安定な光を放つ電灯の下。赤と白のまだらになった塊がぼとぼと降ってくるのがわかります。
それはあなたがたの頭上にも落ち、ぐじゅりと湿った肉の感触と生温い赤が頬を伝います。
まるで雨のように降り注ぐ、ばらばらに千切られた人体。絶えまなく落ちるそれらは、しかしそれだけでは飽き足らず、もぞりと動くのが見えるでしょう。
蛆虫か尺取虫に似た動きで指がぐにぐにと伸縮を繰り返し、千切れた肉は表面をさざ波立たせてじりじりと血の上を動き、まだ原型を留めている人体は骨や関節を無視した動きでぎくしゃく這い。
それらは血の海を泳ぐ魚のようにあなたがたへとじわりじわり寄ってくるのです。
怪異はあなたがたを取りこもうとじくじく取り囲み、再びスピーカーから脳をやすりでかけるような音声が響きました。
『コレより 着火 致しマす』
『遺族イイイイイゾクノ 方ハ 黙祷』
音声が絶えると、ひらけたホームの天井から。ぼとり。子供らしき形をした炎の塊が落ち、その周囲をあかあかと照らし出します。
いや、照らされているのではない。炎はまるでガソリンに投入されたかのように大きく火柱をあげたちまちのうちに周囲の肉片や血だまりに燃え移っていくのです。
あなたがたがうろたえるうちに、辺りは一面火の海となり、あなたがたをも飲みこもうと大きく口を開けているのが見えます。

もう時間はない。背後にはただただ暗い線路と、正面には一階へと駆け降りる階段。
行動できる時間は、ほんの僅か。たったひとつ、何かをすることだけ。
二人で話しあい、RPの結果。どうするか決定、宣言してください。

※この話しあいにはシナリオ上時間制限はありませんが、もしもあまりに長引くようでしたら制限を設けても構いません。
HO2は足を掴まれていますが、これはフレーバーであるため、最終決断には影響を及ぼすことはありません。


宣言により、エンディングが分岐します。
◆エンドA→シャッターの穴へ逃げる、その場に留まる
◆エンドB→ホームからトビコム

分岐後の描写はその時の状況によって多少変更を加えてください。
また、どちらかが留まりどちらかが飛び込んだ場合は留まったPCはエンドA、飛び込んだPCはエンドBとなります。
6:エンディング エンドA【つぎのひとを さがしましょう】
あなたがたが階下に逃げれば、炎はまた追ってきます。目の前にあるのは袋小路の広場。
シャッターには異様な肉と皮とが蠢き、それは着火剤となりたちまちのうちに炎が広がっていくのを見るでしょう。
シャッターに挟まっていた肉塊を見れば、確かに燃えた肉のせいで暗い穴が開いているのが見え、しかし狭いその中に潜りこんだ瞬間、はっと気がつくでしょう。
ここは、炉の中だ。
肉と骨が燃える甘ったるい匂いが辺りに漂い、聞こえる悲鳴にあなたがたは道を塞がれます。炎は止む勢いを見せず、やがて二人を飲みこみ。
爛れる皮、肺を焼く熱、焦げる肉。熱と痛みとであなたがたの脳がただただ飲みこまれる、最後の瞬間。
ぐしゃ。
HO1は自分自身の肉体が、どこか遠くでトビコンダのを感じました。
燃える、焦げる意識は遠く、遠くへと追いやられ。
しかし、すぐに体が千切れ吹き飛ばされる痛みがあなたがたを襲います。
電車に撥ねられた。その実感が脳の遠くで湧きあがり、しかしそれ以上の思考は激痛に阻害されます。鉄の車輪が肉を引き摺り骨を割り脳を潰し皮を引きちぎり。
撥ね飛ばされた体が既にない命が繰り返し繰り返し最期の景色を見せ、体中を千切っては火葬にし、また戻ろうとすれば同じく引き千切られ。
永劫に続く痛みと苦しみと業火の前に、ふと誰かが立ちました。
あなたがたは囁くでしょう。五体満足でそこに立つ人間に。なんの辛苦も味わってはいないその耳元に。
憧憬と怨念を籠め「トビコミタイ」と。

さようなら。HO1、HO2は共にロストしました。あなたがたふたりは怪異となり、次の犠牲者を引き摺りこむのでしょう。


エンドB【心中】
あなたがたは、とん、とホームの端を蹴ってふたり暗闇にトビコミます。
死者の手が羨ましげにそれを追ってくるのがわかり、雪崩れる炎があかあかと、辺りを焼きつくし舐め尽くすのが見え。
しかし誰もホームの先にトビコメナイように力尽き炭になっていきました。
自由落下していく体は、まるで底のないような暗闇の中をどこまでも、どこまでも。重い頭を下にして落ちていき。
やがて、
かしゃん。
薄いガラスを突き破るかのような音があなたがたの耳に届きました。

どさり、とあなたがたの体は固い線路に投げ出されます。
眩しい太陽の光と、ざわめく人々の声。
「人が線路に落ちたぞ」「よろめいたみたい」「すぐに連絡!」
ざわざわと騒ぐ声の中、繋いだ手の感触ばかりが確かにありました。
HO1の手は確かにHO2を握ってますが、すぐに悟るでしょう。
HO2の姿が徐々に透け、消えていくことに。
あなたの目の前でHO2はじわりと消えていき、やがて地面に溶けるように完全にいなくなってしまいます。
茫然とするHO1を駅員が引っ張り上げ、騒然としている真ん中にあなたはたったひとりで引っ張り出されました。
あなたが先ほどまで見ていた相手の姿など、この場の誰も知りません。
電車がまだ来ていなかったことが幸運だと諭されながら帰路についたあなたへ、やがて病院から電話が入るでしょう。
入院していたHO2の意識が回復した、と。

おめでとうございます、両者生還です。生還報酬として1d10の正気度を得、これからもふたり。怪異から逃れ生きていくでしょう。
真相 「トビコミタイ」の噂は絶え、探索者は現世へ帰ってきた。
しかし世間に広がり人を食った怪異は本体がなくなった後も、自らの安寧を求め苦痛を和らげるために噂のルールの通りに人間を取りこみ続ける。
それはいっそ、本来のトビコミタイよりも早いスピードで。
怪異は変貌し、でんしゃを望んだあつしくんの呪いをベースに死者たちの火葬場へと変わっていく。肉に刻まれた苦痛が繰り返し繰り返し噴出する空間に、探索者は飲みこまれることとなる。
※「累」はHO、導入、そして舞台背景共にトビコミタイと同じものですが、トビコミタイで誰かが本体である正田あつしくんを退けた後のこととなります。
そのためトビコミタイの真相を知り二周目を希望する方に回すのがよいでしょう。
補遺・変質する都市伝説 都市伝説は変異する。
戦後間もなくにはコックリさんという都市伝説が流行り、その派生としてキューピッドさん、エンゼルさんなどが作られたように。
人間の脳を渡る怪異は変質を遂げ、その本質さえも如何様にも変じていく。
例えば誰かに知らせなければ不幸になると脅すチェーンメール系都市伝説が、その始まりは不幸などではなく【受け取った相手に幸運が訪れる幸福の手紙】だったことなど、最早覚えている者もほとんどいまい。
トビコミタイもまた変質する。だが、シナリオという確定づけられた真実の存在する文章という性質上、それは人の噂に上ることでの変質ではない。
それは誰かが望んだ、続き。二度目。より惨い未来像への希望により、人間の手で変質させられた怪異。
目的を失い、行方を失った被害者たちが眠ることを許されず。この本を読むあなたや、この文章を書く私や、続きを望むプレイヤーの カサネる罪に引き摺りだされ苦悶の声を上げる。
あなたには聞こえるだろう。
数多の人間の「トビコミタイ」の合唱が。
その中には、かつてこのシナリオでロストしたキャラクターの声も  混じっているかもしれない。

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