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双刀の解system:CoC6版

使用可能サプリ:CoC6版2010・2015
フローチャート 導入
1:お堂
  2:右の道
  3:左の道
    4:行き止まり
      5:鉄扉
        6:洞穴の間
          7:平安調の屋敷
            8:穴の底
              9:茨木童子の間
              10:どちらが鬼か
                11:エンディング
          
   真相
導入 導入は鬼と遭遇するPC1と髭切と遭遇するPC2、それぞれの個別導入になります。

PC1の導入
あなたは暗い夜道を歩いています。日常の続きとして、ごく普通の動作として。よく見知った道を歩くあなたは、しかしふと空を見上げ、笑うかのような三日月に気を取られます。
ふと風がびゅう、と吹くと三日月に雲がかかり、辺りは光のない真っ暗闇に。どこか生温く気持ち悪い風がびゅう、と吹き。あなたは誰かがこそこそと話しているような声を聞きます。
【聞き耳】を使うのなら、その言葉を聞きとることができるでしょう。声はこのように話しています。
「我らが恨みを晴らしたく」「御大将が元へお運び候へ」「いざや、いざや」
風に運ばれ雲が晴れた時、あなたは驚くでしょう。目の前にあったのはいつもの道などではなく、周囲にびっちりと誰かの墓が並ぶ、古い山道でした。
突然変貌した帰り道に、 〔0/1〕のSAN値チェックです。

・主な使用可能技能
【目星】で周囲の墓を詳しく見ることができます。月あかりだけが頼りの山道で、どの墓も苔むし異様な雰囲気を纏っているのがわかります。
また、墓のひとつにこのように文字が彫られていることもわかるでしょう。《朋…酒……子ヲ…ル》あまりに古びているため、読み取れる文字はこれくらいです。

※KP向け情報:ここの全文には《朋友酒呑童子ヲ祀ル》とあります。髭切を所持していた渡辺綱やその主君である源頼光に斬られたという伝説の残る鬼の墓です。これは茨木童子が作ったものです。

【目星】が終了する、または山道を移動しようとするとイベントが起きます。
山道の奥からこちらへ歩いてくる人影があるのです。それは黒い軍服らしきものをかっちり着こんだ男性のように見えました。膝丸(鬼)との邂逅です。
膝丸はあなたを見つけると、はっと目を見開き、「このようなところに人の子がいるとは。ここは危険だ、恐ろしい鬼がうろついている」とあなたに注意を促します。
この時点で膝丸があなたに渡すことができる情報は以下の通りです。
・出口と呼べるものはない
・ここは鬼が作った空間のようだ
・自分もまた鬼に閉じ込められてしまった
・鬼を斬れば出られるが、元凶が見つからない

そのうえで、膝丸は「鬼は人間の生き血や生肉を好んで食らう。人がうろつくには危険だ。俺が随伴を務めよう」と同行を求めます。
探索者がどうしても嫌だと断ったなら、膝丸は同行しません。しかし、単独行動を行った場合、邪魔だとみなされたPC1はPC2と合流する前に鬼が現れあなたを食い殺してしまうため推奨はできません。
膝丸は「あちらに休めそうな場所がある。人の身では山道は疲れるだろう。そちらへ行ってみよう」と、あなたを→1:お堂へと案内します。このお堂にてPC2との合流を行います。

PC2の導入
あなたは普段通り家で過ごしています。テレビを見ているのかもしれませんし、のんびり本を読んでいるのかもしれません。
外には三日月が浮かび、穏やかな夜であるとわかります。しかし、ふと電灯がちかちかっと瞬き、一瞬の後にばちんっとけたたましい音を立てて全てが消えてしまいます。
テレビも、電気も、携帯の画面でさえ。停電か、そう考えたあなたの頬に生温い風が吹きつけます。
室内だというのに、窓も開けていないというのに。じきに灯りが射し込み、照らし出された周囲の景色。
それは見慣れたあなたの自室などではなく、真っ赤な鳥居のびっしり並ぶ、思わず肝が冷えてしまいそうな空間でした。質量のある赤が立ち並ぶいっそ禍々しい光景に〔0/1〕のSAN値チェックです。

・主な使用可能技能
【目星】で鳥居の上部に、銘を入れた額が飾ってあることに気が付きます。額にはこのように書かれています。
《多田大権現》
【オカルト】で、多田大権現とは多田神社の御祭神であり、多田神社とは鬼切丸が所蔵されている場所のことだとわかります。

技能を使用する、またはこの場所から移動しようとするとイベントが発生します。
鳥居の奥にぽつりと浮かぶ白い人影。若い男性のように見えるかの人は、あなたが彼に気がつくと同時にこちらを見て、穏やかな様子でにこりと微笑みます。
「やあ、こんばんは」
髭切との邂逅です。自己紹介をした彼は現段階でこのような情報を持っています。
・出口は見当たらない
・目を覚ましたらここにいたので、あまり状況がわからない
・ここを作った何かは近くにいるようだが、姿が見えず困っている

最後に髭切は、あなたの前に跪いてこう言います。「信じてもらえないかもしれないけれど、僕は刀剣の付喪神。
人に仕える、人に作られた神さ。刀は主がいてこそ真価を発揮する。どうか僕の主になってはくれないかい?」とあなたに頭を下げます。
探索者がどうしても嫌だと断ったなら、髭切はしぶしぶながら願いを取り下げます。しかし、危険だからと必ずあなたと同行するでしょう。
鳥居の並ぶ奥には社らしきものがあり、その反対側はひらけた場所に繋がっているようです。奥の社には目だった情報はありません。ひらけた場所に向かうなら、→1:お堂へ移動してください。

※髭切、膝丸はそれぞれ自分が最初に出会った探索者のことを親愛をもって接するようにしてください。それぞれの探索者に離れ難いと強く思わせることがシナリオ上重要になります。
また、ここはどこなのかとスマートフォンを使用したがるPCもいるかもしれません。しかし、通話やネット通信などの通信機能は無事に使うことができますが、GPSはエラーを起こし、現在地は表示されません。
NPC ❖偽なる鬼斬り 膝丸を模る鬼・茨木童子
この膝丸は刀剣男士の膝丸とそっくり同じように振舞いますが、その正体はこのシナリオの黒幕である茨木童子という鬼です。
茨木童子はあなたがたに気取られぬよう、手下の鬼たちを使って自分が用意した舞台へと誘導していきます。
この鬼を、膝丸ではない。偽物であると判断する方法はいくつかあります。
鬼の墓場からの登場、髭切にしか攻撃を行わない敵の鬼たち、奇妙な鳴き声を発する刀。しかしそのほとんどがただの状況証拠と推論に過ぎません。
最も確実な証拠は、彼が持つ日本刀がよくできた贋作であることを見破ることでしょう。
これを見破るには 【日本刀】【歴史】【考古学】【オカルト】などといった、KPが最も適切と思える技能を使用する必要があるかもしれませんし、いっそ折ってしまう探索者もいるかもしれません。
もし本物の刀剣男士であれば刀が折れるということは存在の終わりを意味するでしょう。
もし彼に心理学を行いたいという探索者がいるのなら、前半では核心に迫るような情報は伏せることを推奨します。

❖真なる鬼斬り 源氏の至宝・髭切
髭切は本物の刀剣男士です。
彼は突然この空間に閉じ込められたことに不審と不安を覚え、また刀剣の性として迷いこんだ人間を守ろうという意識が強く働いています。
そのため探索者には大変好意的に接し、心を通わせ交流を図ろうとします。
NPC能力値 ――――――――――――――――――――――――――
膝丸を模る鬼・茨木童子
STR:14  DEX:9  INT:14
CON:26  POW:18
SIZ:14  APP:15
H P:20  M P:18  回避:50  ダメージボーナス:+1d4
・技能
回避(50%) 日本刀(60%) 居合(30%)
目星(60%) 聞き耳(65%) オカルト(70%) 精神分析(60%)
・武器
日本刀:膝丸(70) 2d6+1+db
・装甲
1ポイントの皮膚
[所持品]
膝丸(贋作) 耐久値:18
――――――――――――――――――――――――――
源氏の至宝・髭切
STR:13  DEX:10  INT:13
CON:18  POW:12
SIZ:14  APP:15
H P:16  M P:12  回避:70  ダメージボーナス:+1d4
・技能
回避(70%) 日本刀(80%) 居合(40%)
目星(55%) 聞き耳(40%) オカルト(55%)
・武器
日本刀:髭切(80) 2d8+1+db
 ※鬼を含む神話生物に対しては+1の固定ダメージを加算する
・装甲
なし
[所持品]
髭切(真作) 耐久値:HPと同値
――――――――――――――――――――――――――
1:お堂 古ぼけたお堂です。壁はぼろぼろ、床は今にも抜けそうなほどですが、屋根はしっかりついており、ひとやすみくらいならできそうです。
PC1と随伴する膝丸、PC2に従属する髭切。あなたがた全員はここで合流を果たしてください。
お堂に集った髭切と膝丸の兄弟は、お互いの無事を喜びます。相変わらず髭切は弟の名前を想い出すことはできませんが、自分の弟と再会できたことに嬉しそうな顔を見せます。
お堂の周囲には、自分達が来た道とは別に左右ふたつの細い道が伸びており、その先に行くことができそうです。

・主な使用可能技能
【目星】で、お堂の天井に古い絵が貼られてあることに気が付きます。墨で描かれたそれは、女性の着物を引っ掛けた恐ろしい形相の鬼であるように見えます。
【聞き耳】で遠くから鬼の叫ぶような声が聞こえます。一瞬遠雷にも聞こえるそれは、しかし確かな意思を持った鳴き声を持った獣の声に、〔0/1〕のSAN値チェックです。

一通り探索を終えると、「ここは鬼の住処だったようだな」と膝丸が言います。その手にはヒビが入った白い椀が握られており、内側に黒ずんだ何かがこびりついています。
【医学】に成功したのなら、その椀は人の頭蓋骨でできており、こびりついた何かは人の血であることがわかります。ここにいるのは人食い鬼であるという危機感に 〔0/1〕のSAN値チェックです。
4:行き止まりのメモを取得した後、お堂へ戻り、ぼろぼろに穴の開いた床やお堂の縁の下から地面を覗くと地べたに設えられた鉄の扉が発見できます。
地面から床への隙間はとても狭いため、扉に入るには8ポイントの攻撃で床を壊す必要があります。
お堂の床を抜いた後→5:鉄扉
2:右の道 お堂から伸びる右の道は、片方に絶壁が聳えたっており、いかにも荒々しい岩肌を見せています。
そしてその絶壁には古びたしめ縄や妙な図柄が描かれた木札がびっしりとかかっており、不気味な雰囲気を漂わせています。
こちらの道は絶壁と木立で、あまり奥までは行けないようです。この先に道は続いていません。

・主な使用可能技能
【目星】で絶壁の上方、木が生い茂りはじめた岩肌との境に何か白っぽいものを発見します。それは岩肌に垂れる色艶の悪い腕に似たものでした。
人間の形の手は、しかし関節のひとつもないようなでろんとした動きをさせてびゅるっと茂みに引っ込んでいきます。突然目撃してしまった怪異に〔0/1d2〕のSAN値チェックです。
また、腕のあった辺りに、それとは違う白い何か、紙切れのようなものが貼りついていることに気が付きます。
【聞き耳】を使用すると、木々のざわめきの中に妙なひそひそ声を聞きます。「鬼がきたよ」「鬼がいる」しかし辺りを見回したとしてもその場に人の姿は見当たらず、ただ木の葉がざわめいているだけです。
正体不明の囁き声に〔0/1〕のSAN値チェックです。
【登攀】で絶壁を上ろうとする探索者がいるかもしれません。登攀を行い中腹まで上ると、岩壁に古びたお札が貼ってあるのを見つけます。
朱墨で描かれたそれは、中央に真っ赤な目玉と、その周囲にびっちりと文字が配置されており、いかにも何か意味ありげです。
お札を剥がそうと思うなら、 【DEX*3】に成功しなければ、ばりっと音をたてて札は破けてしまうでしょう。
この器用度ロールに成功した場合、《目玉のお札》が手に入ります。
お札を入手してもしなくても、崖の中腹にさしかかったところで、上の茂みががさがさ動きます。
あなたがたがはっと音のする方を見ると、先程引っ込んだ真っ白な手がずるんと骨も関節もない動きで出てきます。腕から繋がる先はなく、ひたすらに長いゴム手袋のようなそれ。
びゅるんと出てきたそれは、登攀を行っている探索者に掴みかかると、その死者の温度をした掌で絶壁から突き落としました。おぞましい感触に〔1/1d3〕のSAN値チェックです。
また、あなたは絶壁から突き落とされてしまいます。 【幸運】を振らせ、失敗したなら落下により1d2のダメージを受けます。
3:左の道 こちら側は月あかりに照らされ、比較的開けた明るい道です。左の道にやって来た途端、イベントが発生します。
道の奥に色とりどりの着物を着た何かが立っているのです。女性が着るような華やかな色。
しかしそれは明らかに女性の体つきではなく、着物の裾からちらちらと、筋骨隆々とした腕が覗いているのも見えます。
あなたがたが近づこうとすると、着物を着た人物はくるりとこちらを振り向きます。
それは、鬼でした。角を生やし、ぎらぎらと光る眼を探索者らに向け、牙の生え耳まで裂けた口をにやーっと愉快そうに歪めています。肌の色は悪く、しかしいかにも剛力そうに筋骨隆々として。
この妖怪と呼ぶに相応しい異形を目撃したあなたがたは 〔1/1d3〕のSAN値チェックです。
鬼を見つけるなり髭切と膝丸は刀を抜き走りだします。鬼を斬ろうという殺意に漲り、その様子は正しく鬼退治を伝承に持つ刀剣の姿そのものと言えます。
鬼はあなたがたをからかっているかの如くにたにた笑うと、さっと着物を翻し更に奥の道へ走っていってしまいました。
探索者が 【DEX対抗】を行いたいと申請したのなら、鬼DEX12との対抗を行うことができます。しかしあなたがたと鬼との間には距離があるため、閾値は通常より-20してください。

DEX対抗に成功した場合、あなたは鬼に一瞬追いつくことができます。
鬼を引き留めようとその着物の裾を掴んだ瞬間、髭切と膝丸が切り捨てると言わんばかりに鋭い斬撃を繰り出します。
しかし、降り下ろされた刃は鬼の肉には届かず、鬼は着物をするりと脱ぎ捨て、更に奥へと逃げて行ってしまいます。
→4:行き止まりへと移行してください。
DEX対抗に失敗してしまったなら、あなたがたは鬼を追いかけ奥へと走っていく髭切膝丸を見送るしかできないでしょう。
悔しさを感じつつ、
→4:行き止まりへと移行してください。
4:行き止まり 着物の人物を追いかけたあなたがたは、しかし行き止まりに突き当たってしまいます。一体奴がどこへ行ったのか、きょろきょろ辺りを見回しますが人影などほんの少しも見当たりません。
暗い木立。こちらに多いかぶさるように枝葉を伸ばす木々が何かの怪物に見えるほど、闇が深く恐ろしい場所です。
月の光も木々に遮られ、ここにはあまり届きません。
しかし辛うじて光の射す地面の隅に、紙切れが落ちているのがわかります。それは随分古びており、女の着物を着た鬼の絵が描かれています。
DEX対抗に失敗していたなら、正面に引っかかる女ものの着物を発見しますし、悔しそうに辺りを見回す髭切と膝丸も目撃します。

・主な使用可能技能
紙切れに 【目星】をすることで、鬼の絵の裏面に達筆な文字が書かれていることがわかります。
《鬼の口は床下にあり》
これにより1:お堂の床下に入り口があることのヒントを得られます。
着物を詳しく見る、または 【目星】をすることで着物の袂(袖部分)に鉄製の鍵が入っているのを発見します。
鍵には恐ろしい鬼の顔が彫られており、鉄の輪がちゃりちゃりと音をたてます。着物を振れば音がしますので、 【聞き耳】でもこの鍵を見つけることができるかもしれません。あなたがたは《鬼の鍵》を入手します。
5:鉄扉 鬼の顔が全面に刻まれた鉄製の扉です。この扉には南京錠がつけられており、これは《鬼の鍵》または 【鍵開け】【STR15とのSTR対抗】で開けることができます。
鍵を外すと重い鉄の扉を開けることができるようになります。奥はなだらかに地下へと向かう洞穴になっており、明らかに人工的な木組みの支柱が全体を支えています。
壁は岩混じりの土砂。それを木でしっかり支え、まるで坑道のような光景が広がっています。ひんやりとした一本道を、あなたがたは奥へと向かって行くことになります。
6:洞穴の間 洞穴の中はところどころに設置された松明で、明るく照らし出されています。
あなたがたが奥へ進むほどに、壁はびっしり木組みで覆われたものから剥き出しになった岩肌へと変化していきます。
太い木の支柱と、岩でできた壁。狭い通路はだんだんと広く立派になっていき、やがてあなたがたは横穴のいくつも掘られた岩の広間に出るでしょう。
横穴は合計で8つあります。あなたがたはこれをひとつひとつ調べていくことができます。

※KP向け情報。洞穴の位置は手前からでも奥からでも、好きに数字を割り振って構いません。各自わかりやすいように行ってください。
洞穴それぞれには際立った差異はなく、またどこもそう深くはないため、中に踏み入ればすぐに中を見渡すことができるでしょう。

6-1)
灯りの入ってくる、明るい洞穴です。剥き出しになった岩肌と地面、それしかなく。踏み固められた地面からは草すら生えていません。
【目星】で洞穴の奥に何かの像が彫ってあることに気が付きます。それはまるで隠されるようにひっそりとある、鬼の彫刻でした。
人の着るような着物を着て、しかし顔は鬼のそれ。そして足元には花や香が供えられ、微かに甘い香りをたたえています。この洞穴には鬼とも人ともとれる不思議な彫像ひとつきりです。


6-2)
洞穴の中にわざわざ松明がかけられている、不自然に明るい洞穴です。
この洞穴の壁にはノミで彫ったようにしてこのような文章が刻まれています。
《許すな。許すな。許すな。許すな。許すな。許すな。星熊よ、いくしまよ、かねよ、虎熊よ、熊よ。我が朋友の死、許すまじ》

6-3)
非常に浅い洞穴です。見ようによってはただの凹みと言われても仕方がないような。ここには勿論何もありません。


6-4)
洞窟の正面に、人骨を発見します。それは故意にばらばらにされ、ひとりぶんがかわいそうな鳥の巣のように積み上げられていました。人骨を目撃し〔0/1〕のSAN値チェックです。
【目星】で人骨の間に木製の板切れを見つけます。人型に切り抜かれ、墨で簡素な目鼻が書かれたそれ。体の中央には何かの布きれが挟まれており、ひどく禍々しく不気味な雰囲気を醸し出しています。
裏面には《源氏…門…渡……呪……》と書かれており、なんらかの悪意をもって作られた品だということがありありとわかるでしょう。〔0/1〕のSAN値チェックを行ってください。
【オカルト】でこの木片は平安時代に流行した呪い人形であることがわかります。同時に、呪い人形には本来なら呪う相手の髪の毛を挟むはずだということも思い出すことができます。
【考古学】で、布きれは非常に古いものだとわかります。糸の重ね方、劣化の度合い、色合いや刺繍から、これは平安時代に作られた布ではないかと推測できます。

6-5)
草がぼうぼうに生え、誰も立ち入ることのないような洞穴です。奥はひんやりとして、どこか冷えた空気を感じます。
【聞き耳】で、洞穴の更に奥から何か声が聞こえるのがわかります。それはこのようにひそひそと喋っているようです。
「まだ気がついていない」「このまま上手くやれば、源氏刀はおさらばよ」「楽しみじゃ、楽しみじゃ」



6-6)
人間大くらいの鬼の石像が置いてあります。虎柄の腰巻と、頭には二本の角。でっぷりと肥えて垂れ下がった腹。
いかにも絵巻物に出てきそうな鬼の姿ですが、その顔にはべたべたと《目玉のお札》が三枚貼ってあります。
【目星】で石像が産毛の一本一本まで見事に彫り上げられており、石に鬼を彫刻したというより、生きた鬼を石にしたといった様子であることがわかります。
お札を剥がすのであれば 【DEX*3】に成功する必要があります。もし失敗すれば、お札はびりびりに破けて二度と使うことができないでしょう。
お札は二枚までなら無事に剥がすことができますが、三枚全て剥がしてしまうと石になった鬼が復活してしまい、戦闘に入ります。鬼のステータスは以下を参考にしてください。
鬼・星熊(能力値はクリックで参照) ――――――――――――――――――――――――――
鬼・星熊
STR:10  DEX:8  INT:10
CON:9  POW:10
SIZ:11  APP:4
H P:10  M P:10  回避:16  ダメージボーナス:0
・武器
爪(50%) 1d3+db
・装甲
1ポイントの皮膚
――――――――――――――――――――――――――

6-7)
暗く、じっとりと湿った様子のある洞穴です。奥は全く見通すことができず、かさかさと何かが蠢く音がします。
中に立ち入る探索者がいたなら、その腕が突然がっと掴まれます。それは力強く、鋭い爪の生えた鬼の手。
探索者を洞穴の奥に引き摺りこもうとするかのような腕に 〔0/1〕のSANチェックを行ってください。
鬼の手はしかしぱっとあなたの腕を離し、けらけらけらという笑い声を残して消えてしまいます。ただ怖がらせるだけのような様子に、いっそ腹も立つことでしょう。



6-8)
少し奥が広い、何もないように見える穴です。正面の壁には赤く煌めく何かが嵌めこんであり、外からの光を受けてきらきらと輝いています。
あれは何なのかと奥に立ち入ろうとすると、不意に頭上から刀剣がその切っ先を下にして降り注いできます。探索者が 【幸運】または 【回避】に失敗すると、降り注ぐ刀を避けきれず1d3の傷を負ってしまいます。
深々と地面に突き刺さった刀剣の群れ。あなたがたが見ている前で、それらの一本一本から黒くモヤのような人影が現れ地を這う声で呻きはじめます。
それは真黒な姿に、白い三つの穴を目口のようにぽっかり窪ませているだけの人を記号化した姿をしています。 〔1/1d3〕のSAN値チェックです。
これらの影は何もしてきませんが、横を通りすぎる際に何か囁いているのが聞こえます。 【聞き耳】に成功したなら、影がこそこそと「アニジャ」「アニジャハオラヌカ」「アニジャ…」と気味の悪い声で延々呟くのがわかるでしょう。
また、奥に輝くものはただのガラス玉であり、探索者を奥へと引きつけるための罠です。
ここに刺さった刀は望むのなら武器として使用することができます。
日本刀・無銘(能力値はクリックで参照) ――――――――――――――――――――――――――
日本刀・無銘 出来損ないの贋作品ども
技能:【日本刀】【居合】【杖÷2】など
ダメージ:2d6+db 耐久値20
[特記]
茨木童子が試作した膝丸の出来損ない。意思らしき何かがおぞましく宿っている。振るうことはできるが、気味が悪い。
――――――――――――――――――――――――――
探索者らが6-5)や6-4)などの中央付近の洞穴を見終わった辺りでイベントが発生します。
このイベントは探索者らが同じ場所に固まっているタイミングで起こしてください。個別行動を行っているようなら、洞穴全てを探索し終わってからでも構いません。

≪落盤イベント≫
あなたがたがひとかたまりになり、次の洞穴を覗こうとした瞬間、どぉん!と大きな音が天井から鳴り響きます。
それが一体何なのか認識する暇もなく、巨大な岩があなたがたの頭上から降り注いできます。落盤だ、探索者らよりも先に反応した髭切、膝丸はそれぞれ近くにいた探索者の手を引き、自分の方に引きよせて落盤から逃れます。
これにより探索者らは二分され、髭切と行動を共にしていた探索者は膝丸と、膝丸と行動を共にしていた探索者は髭切としばらく行動することになります。
大岩はすっかり道を塞いでしまいますが、辛うじて声を張り上げればお互いの声は聞こえるでしょう。あなたがたは怪我もなく、探索を続行することができます。
また、これにより入って来た入り口も塞がれてしまうため、もはやあの古ぼけたお堂に戻ることは叶いません。先に進むしかないのです。
片方はそのまま7:平安調の屋敷へと行くことができますが、入り口側に残されてしまったもう片方の組は、落盤によって開いた狭く暗い横穴を抜けていくほかありません。
この横穴は 【幸運】に失敗するとうっかり蹴つまずくことがあるかもしれないほど、狭く歩きにくい場所です。蹴つまずいてしまう人がいたのなら、膝丸と髭切はあなたに手を貸してくれるでしょう。
横穴は→7:平安調の屋敷へ繋がっていますので、問題なく合流を果たすことができます。

このイベントでは、必ず髭切、膝丸からの忠告が発生します。
彼らはそれぞれ、自分の相方、または主ではない探索者に向かって、もうひとりの刀剣男士、あれこそ鬼であると話します。
髭切であれば、
「あれは弟じゃない気がするんだ。いつもよりもくっついて来ないし。ここは鬼の気配だらけでよくわからないけれど、君は特に気を付けたほうがいい。あれにとても気に入られているみたいだから」
と探索者の身を案じ優しく語りかけますし
膝丸であれば
「あの兄者は偽物だ!鬼の匂いがぷんぷんする。恐らく源氏の至宝、あやかし斬りの刀を恐れ確実に仕留めようと一計を案じたのだろうが。一刻も早く斬り捨てたいところだが、まだ確証はない。いいか、奴に近付きすぎないようにしろ。本物の鬼であれば、人間は餌でしかない。人を食らって腹を満たし、そこで俺を折るつもりだろう」
と厳しく忠告します。
そしてどちらも、この話は合流してからは秘密にするようにと釘を刺します。相手に悟られては元も子もないからと。
この会話を終えて後、再び合流を果たしてからは、彼らはまたそれぞれの相方の元へと戻っていきます。

7:平安調の屋敷 落盤のあった洞穴を抜けて、あなたがたが合流を果たしてすぐ。曲がりくねった道を行くと、突然ばっと視界が開けます。
それは燦々と降り注ぐ日の光。広々とした空間に、どうしてか空が見え。花々が咲き乱れ、爽やかな風が吹いています。
そして大きな池や古い松の木のある向こうに、平安時代によく見られた寝殿造りの豪華な屋敷が建っているのが見えます。
この寝殿造りの屋敷は壁や扉のほとんどない、風通しのよさそうな場所です。御簾や衝立で仕切られたそこは、一目で見渡せるようなつくりをしています。

・主な使用可能技能
【目星】で無人の屋敷の奥に、人影を見つけます。人影はこちらに背を向け、十二単を身に纏い、御簾の向こうで長い黒髪を垂らしています。それはまるで、平安時代のおとぎ話に出てくるお姫様のように見えます。
背を向ける女性に近付いても、彼女は微動だにしません。まるで命というものが存在しないかのように。
そしてあなたがたが間近まで迫ったその時、ごろん、と唐突にその頭が傾ぎます。彼女のすっかり骨ばかりになった骸骨が、首から外れて転がり落ち。
最も近くにいた探索者の足元でその暗い眼窩を晒しています。その格好は骨と長い髪でできた毬にも似て。
頭骸骨が落ちるのを目撃した探索者は 〔0/1〕のSAN値チェックです。
また、彼女の骨ばかりの胴体は黒い漆塗りの小箱を抱えています。金の蒔絵が施された豪華な小箱。所謂文箱と呼ばれる手紙を仕舞うためのものですが、この中には一通の手紙が入っています。
手紙の本文は以下の通りです。
《茨木の君、お慕い申し上げております》
本文を読んだ途端、ただの真っ白な紙からじわっと赤い何かが染み出してきます。それはあっという間にびっしょりと手紙を濡らし、探索者の手まで血染めにしてしまうでしょう。
血染めの手紙に 〔1/1d3〕のSAN値チェックです。

※血染めの手紙から分岐するEDがあります。もしここで手についた血を舐めたなら→END A-2

【オカルト】または 【歴史】で茨木の君へ宛てた恋文に思い当たります。それは伝説とも言える茨木童子という鬼の話。この鬼は元は美男子と名高い人間でありましたが、女性から送られてきた血染めの恋文の血を舐めたところたちどころに鬼へと変貌してしまったというものです。
手紙を読み終わると、くしゃくしゃと何か固いものが崩れ落ちる音がします。
それはあの首なし姫が、風化によってでしょうか。全身の骨を崩しながら地に伏していく音です。
中身を失った着物はぺちゃりと潰れ、そして床に接した部分から暗い色の腐汁がぷじゅぶじゅ湧きはじめます。その腐った汁は姫の着物を中心に広がり始め、探索者らの足元まで届きます。もし探索者が逃げないというのなら、焼け爛れる痛みと共に1d2の酸によるダメージを受けます。
あなたがたの見ている前で、空の色さえどす黒い紫そして漆黒へと変化し。屋敷は屋根も柱も何もかもを汚らしい汁に埋め、小さく小さく崩れていき、やがてその跡地から巨大な穴が現れます。
8:穴の底 穴は底が見えず、底がどれだけあるのかもわかりません。
岩が震えるように鳴き、穴の端に寄ればともすれば崩れ落ちるのではいかという不安感が過りますが、心配しているようなことはほんの少しもなく。
では一体何の振動なのか。それはすぐに理解することとなりました。山中だというのにこれまで不自然なほどに姿を見せていなかったムカデ、ヤスデ、クモ、ウジなどといった虫たちが、穴を見下ろすあなたがたの下からぞぞぞっと群れ成して這いあがってくるのです。
それはほんの少しの間のことだったが、まるで穴が開いたのを好機と言わんばかりに穴から這い上がって来たそれらはそこに立つ人間をただの棒きれとでも思っているかのようにあなたがたの手足にまとわりつき。
多足の細かいかぎ爪が皮膚を這いまわり、服の下を駆けまわり、そうしておぞましいほどの不快感が一瞬のうちに過ったと思えば、風のようにひゅう、と消えてしまいました。
全身に多足の虫たちが這いまわり、鳥肌たつほどの気持ち悪さに〔0/1d2〕のSAN値チェックです。
穴に入ることを怖がる探索者がいるのなら髭切、膝丸に先に飛び降りさせ、下で受け止めると提案してもいいでしょう。
【登攀】でゆっくり下へ降りる、 【跳躍】で思いっきり飛び降りる、どちらをさせても構いませんが、失敗したのなら軽い衝撃だけが体を通り抜け、1d2の落下ダメージを受けます。
それは底の深さと相反するほどの衝撃の少なさで、まるでこの穴の底がこの世とは違う場所に繋がっているような奇妙な恐怖さえ覚えるかもしれません。
いかなる方法を使ってでも、穴の底に到着したあなたがたは、光もないというのに不思議なことにほの明るく見える、だだっ広い空間に出ます。
ここには巨大な青銅製の扉と、巨大な鬼の像が三体あります。虎柄の腰巻と牛の鬼を持った、典型的な鬼の姿です。これは上階にあった、お札の貼られた鬼の像と全く同じ格好に見えます。
あなたがたが扉に近寄ろうとすると、鬼の像が動き出します。
鬼三体との戦闘に入ります。

※KP向け情報。奴らは《目玉の札》を貼ることで石へと変化し、無力化できます。札を貼るには【DEX*3】または【回避】で鬼の動きを掻い潜りながら行う必要があるでしょう。

鬼の能力値は以下の通りです。
大江山の鬼・伝承にあるものたち(能力値はクリックで参照) ――――――――――――――――――――――――――
鬼・虎熊
STR:15  DEX:6  INT:10
CON:16  POW:8
SIZ:18  APP:3
H P:17  M P:8  回避:12  ダメージボーナス:+1d4
・武器
爪(50%) 1d3+db
こんぼう(30%)1d4+db
・装甲
1ポイントの皮膚
――――――――――――――――――――――――――
鬼・いくしま
STR:12  DEX:11  INT:8
CON:10  POW:12
SIZ:12  APP:5
H P:11  M P:12  回避:22  ダメージボーナス:0
・武器
爪(50%) 1d3+db
こんぼう(30%)1d4+db
・装甲
1ポイントの皮膚
――――――――――――――――――――――――――
鬼・かね
STR:14  DEX:12  INT:14
CON:12  POW:13
SIZ:14  APP:4
H P:13  M P:13  回避:24  ダメージボーナス:+1d4
・武器
爪(50%) 1d3+db
こんぼう(30%)1d4+db
・装甲
1ポイントの皮膚
――――――――――――――――――――――――――
鬼三体を無力化する、または奥の扉まで突っ走るなどすることで→9:茨木童子の間に移行します。
9:茨木童子の間 青銅の扉には《首領の玉座》という文字が彫られており、恐ろしげな鬼の顔と、周囲を彩る花の彫刻で恐ろしくも華やかに仕立てられています。
この立派な扉を開けると、中にあったのは洞窟の壁から生えるように建てられた絢爛豪華なお堂でした。あなたがたは地上にあったあのぼろぼろのお堂が建てられた当初のような姿だと感じるでしょう。
柱は目が覚めるような朱で塗られ、青、緑、金、黒の彫刻が天井や壁を覆い、仏教建築として毒々しいほどの美しさを放っています。
その小さくも華美なお堂の中心に、鮮やかな女性ものの着物を着た恐ろしい顔の鬼が鎮座しています。
鬼はあなたがたを明らかに待ち構えており、ニタァと耳まで裂けた口で笑うと、このように言います。
「終わりだ、終わりだ。血食い肉抜き骨を噛み。茨木童子の餌となれ」
それだけ言うと鬼は襲い掛かってきます。
茨木童子(偽)の能力値は以下の通りです。
茨木童子代理・熊童子(能力値はクリックで参照) ――――――――――――――――――――――――――
茨木童子代理・熊童子
STR:14  DEX:18  INT:16
CON:9  POW:16
SIZ:9  APP:3
H P:9  M P:16  回避:36  ダメージボーナス:0
・武器
爪(50%) 1d3+db
・装甲
1ポイントの皮膚
――――――――――――――――――――――――――

茨木童子(偽)は倒されると、耳を劈くような断末魔を発しながらその場に倒れて、源氏の二振りを指さしながらこのような最期の言葉を置いていきます。
「我らが悲願、どうか叶えてください茨木様……さあ、その隣の、刀を、壊すは今……!」
そうして鬼は息絶え、あなたがたは重大な選択を行わなければなりません。
10:どちらが鬼か 鬼の断末魔を聞いた直後、ぎぃんと強く耳に突き刺さる音がします。
金属と金属が強く触れ合う音。はっと後ろを見れば、髭切と膝丸が互いに真剣を出して打ち合い組みあっているのが見えるでしょう。
髭切は弟だと思っていたのに、と悲しげに言いますし膝丸は鬼が兄者のふりをして、と憎らしげに言い捨てます。
あたながたは選ばねばなりません。
髭切こそが刀だと信じて彼につくか、それとも膝丸こそ刀だと信じて彼の味方をするか。
傍観は許されず、もし探索者が決断を鈍らせた場合は、彼らはそれぞれ最初に出会った相手に自分こそが本物だ、信じてくれるねと訴えかけます。
探索途中でこのイベントに移行した場合は、よほど探索者がもの好きでない限り、見破られた膝丸は髭切と探索者二人と対峙することになります。
探索者がどちらについたとしても、髭切と膝丸はそれぞれ適切な反応を返しながら戦闘に入ります。二振りの刀は積極的にお互いを狙い、探索者がかばうなどしない限り探索者を傷つけることは少ないでしょう。
二振りの能力値はNPC紹介を参照してください。

戦闘の結果によってエンディングが分岐します。
髭切が折れ、膝丸が生き残った→END A-1
膝丸が死に、髭切が生き残った→END B
双方相打ち、または探索者の手によって共に死亡→END C
11:エンディング END A-1【ししむらと化して地に伏せども】
膝丸の刀が髭切の心臓を突き刺す、その瞬間に甲高い音がその場に響き渡ります。ぱきーん、としなやかな鋼が限界を迎えて割れた音。
それは髭切の持つ刀から聞こえ、光を跳ね返す切っ先が宙を舞い、愕然とした表情の髭切がその場に崩れ落ちます。その姿はふとした瞬間にすっかり消失し、後に残されたのは完全に破壊された一本の刀剣だけです。
そして兄にとどめをさした膝丸はといえば、折れた刀剣を見下ろし高笑いをはじめます。
気が振れたのでもなんでもなく、純粋なる狂喜に支配されて。
膝丸は探索者に振り向くと、今までとはまるで違う、恐ろしい笑みを浮かべながらこう言います。
「礼を言わせてもらおう。俺をよく楽しませてくれた。鬼切りの剣も折れたし、久々に素晴らしい余興になったぞ」
膝丸は鬼の本性を剥き出しにしながら、本来ならここで人間も食い殺すつもりだったが楽しませてもらった礼に家に帰してやろうと笑いました。
探索者が膝丸に敵対の意思を見せようと、膝丸は極めて楽しそうにしながら自分の持つ刀をざんっと岩壁に突きたてます。
空間全体がぐらぐら揺れ始め、あなたがたの視界は黒に染まっていきます。
完全に閉ざされた視界から起き上がると、そこはあなたがたが元いた場所です。自宅であったり、帰宅途中の道であったり。あなたがたの頭上には満月が輝き、それは三日月の夜からおよそ一週間が経過していることを指しています。
また、意識が戻るとともにあなたがたは脇腹にひどい怪我を負っていることにも気がつくでしょう。鬼がつまみぐいをしたような、獣の歯型がついた傷をこしらえて、あなたがたは日常へ帰還します。
おめでとうございます、帰還成功です。髭切の刀は折れ、あなたがたは鬼に食われ永続CON-1となります。


END A-2【鬼よ】
その血は甘く、あなたの脳をくらくらと揺さぶります。
もっと舐めたい、もっと啜りたい。この甘くて美味いものをもっともっと。
あなたはPOW*3を行い、これに成功したのなら人間のまま衝動も消え探索を続行できますが、もしこれに失敗してしまったのなら。鬼への変化が始まります。
STRとCONが一時的に5上昇し、肉を食いたい、血で喉を潤したいという強い欲求に苛まれ、もう一人の探索者へとその手を伸ばしてしまいます。この段階では外見の変貌はありません。
肉を食いたいという衝動にもし抗おうというのなら【POW*1】に成功するほどの強靭な精神力が必要ですが、大抵の人間は衝動に負け、探索者を殺してでも肉を食おうとします。
もし【POW*1】に成功したなら、あなたの鬼への変化は止まりゆっくり人へと戻っていきます。再び探索を続けてください。しかし例え人に戻ったとしてもあなたは不定の狂気、カニバリズムを獲得します。
人間の肉を食ったあたなは完全に鬼へと変貌していき、その骨格から筋肉から、全て恐ろしい鬼の姿へと変わってしまいます。
肌は赤らみ、目はぎらぎらと血走り。髭切はあなたを鬼と定め、悲しがりながらも斬るもやむなしとしますが膝丸は呵々大笑として手を叩き喜び、自分の配下として髭切を殺すように命令します。
この鬼の大将の命令には、あなたは自然に従ってしまうでしょう。
髭切に斬り殺されたなら、あなたの死体はゆっくりと人間に戻り、じきにどこかの山中での事故死が報じられるでしょう。
しかし逆に髭切に勝利し彼を折ってしまったなら。あなたは膝丸の真似をする鬼と共に山の中へ消えていってしまいます。とうに人の意識はなく、鬼として棟梁に仕え、時に人を襲い。現代の怪談として語り継がれるかもしれません。
お疲れ様でした。あなたは行方不明としてロストを迎えます。この終わりは幸福か、不幸か。それを判断するのはただあなたしかいません。


END B【掴み取った真実】
倒され崩れ落ちる膝丸に、とどめと言わんばかりに髭切がその刀を眉間に突き刺します。
頭蓋を深々と貫通したその鋭利な刃は、しとどに血に濡れ。膝丸の手からからんと刀が落ちます。明らかに絶命する傷は、しかし落ちた刀を折ることもなく。
代わりにどろりと膝丸の皮が溶けはじめます。はくはく動く口は、「もう少し…だった…のに…恨み果たすまで…」などと力ない怨嗟の声を落とし、しかし皮がずり落ち、肉がとろけ、目玉が落ち、やがてそれが骨だけになった頃には何も聞こえなくなります。
地面にべっちゃりと広がる鬼の屍から髭切は刀を抜き、そうしてあなたがたにお礼を言います。
髭切との穏やかな会話を続けるうちに、空間全体がゆらゆらと揺れ始めます。鬼が死んだことによりこの場がゆっくりと崩壊をはじめているのです。
しかし髭切は案ずることはないと言い、じきにあなたがたの視界は黒に染まります。
目を開いているのか閉じているのかさえあやふやな空間で、あなたがたは確かに最後、誰かに優しく撫でられたような、背中を押されたような感覚を得ます。
そうして目が覚めると、そこはあのぼろぼろのお堂の中でした。床に開けた穴もなく、いつの間にか夜空には満月が浮かび。あなたがたはお堂の埃っぽい床に寝かされていたのです。目覚めたあなたがたの前には、床に突きたった一本の日本刀。
しかしそれは目を覚ました途端、優しい気配を残し空に溶けるように消えていってしまいました。
おめでとうございます。帰還成功です。報酬として1d10の正気度を獲得し、お堂が設置されている京都の大江山から頑張って自宅へ帰還してください。


END C【剣は折れ、牙は落ちる】
あなたがたの目の前には、ふたつの屍。それは共に力尽きた刀たちの姿。
髭切の色素の薄い睫毛がほたりと落ちた途端、ぱきん、と何かが壊れる音がします。あなたがたが瞬きをした一瞬で、そこにあった男性の姿は掻き消え、ただ真っ二つになった刀だけが転がっているのを見ます。
彼は折れたのだ、そう理解するでしょう。膝丸はといえば、何も起こらず。刀に変じることもなく、物言わぬ肉の塊としてそこで死んでいるとしか言いようがありません。
終わったのか、とあなたがたが安堵したその時。空間がくらくら揺れ始めます。それは眩暈にも似た脳の揺れ。だんだんと暗さを増していく視界の向こうで、ふとこのような言葉を聞くでしょう。
「よ く も」
ぞっとする声に飛び起きると、そこはあの古びたお堂の中でした。外は暗く、あなたがたはここから帰宅しなければならないことに気を重くするでしょう。
おめでとうございます。帰還成功です。報酬として1d10の正気度を獲得し、お堂が設置されている京都の大江山から帰宅してください。
真相 茨木童子という鬼が化けた膝丸、彼が作った空間に閉じ込められた髭切と探索者ふたりは鬼退治をしこの異空間から脱出しなければなりません。
髭切を鬼の仇と睨む茨木童子は、髭切を苦しめて殺すため、人間を利用し復讐を楽しんでいるのです。

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