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ひとにくわれた話/翠:天邪鬼

皐月 某日

――もう長雨の季節だというに、ちいとも雨が降らん。
村で一番の年寄りがそう愚痴のように呟いたのが、そもそもの長い始まりであった。
「本当じゃなあ。雨がこう降らんと、稲を植えられん」
真っ青な初夏の空に、綿花を千切って投げたくらいの雲がぷかあと浮いている。誰もが認めるほどのよい天気。雨が降らんのは困りものだが、それでもまだ年寄りの言葉があってようやく気が付いた程度である。そろそろ苗の植え付けをしようというのに、雨に頼れないならば仕方ない、近くの水路から水を引こう、遠くの田には汲んでいこう、それしきの困りごとであったので、村の若者らはこぞって天秤に桶を引っさげ、まる二日かけて全ての田に水を引いた。そのうちに雨も降るだろう。
「しっかしねえ、ここんとこ暑い日が続くねえ」
女は泥だらけの顔をくしゃっと歪めて笑った。稲を植えながら汗をぬぐって顔を擦るものだから、すぐに汚れて黒くなる。田植えの歌を歌いながら一列になって植え付けをする女衆の誰もがもう泥だらけで、しかし誰も気にしてはいない。田植えとはそういうものだとすっかりわかっている。
「男衆は水汲み、毎日やらにゃいけんとは。こりゃ誰か体を悪くするよ」
雨は未だ降っていない。降っていないが、川は清流を湛え、水路にはうつくしく冷たい水がさらさら流れている。山からの水は絶え間なく海へと注いでいる。雨は降らないが、そんな年もあるだろう。なあに少し男衆は苦労せにゃならんが、たまにはしっかり役に立ってもらおう。誰かが言うと、それにつられて女らは豪快に笑った。子供らも稲を握っては母の背をついてくる。大きな子は水汲みの手伝いだ。
「それにしても、ほんに暑いこと」
陽光は絶え間なく降り注いで、じりじりとした熱気が田畑に広がっていた。


睦月 某日

「んじゃ、水汲みに行ってくるね」
すっかり日常の一部と化した水汲みに、誰ともなしに向かっていく。稲は青々とした葉を天に向かって広げ、すくすくと育っていた。
水路を広げて遠くまで水が届くように、と男らは灌漑に精を出している。おかげでほとんどの田にきちんと水が届くようになったが、それでもまだ水の届かない田があるのも事実だ。最近では女衆も水汲みに手桶を引っさげて向かうようになっている。
「まだ雨は降らんのかい」
「そうねえ、もう何日になるかねえ」
老いて腰のまがった爺が聞くのに答えれば、老爺はひどく顔を顰めた。
「あんた、おかしいと思わんのかい」
雨が降らないのは何かあるんじゃないか、それぐらい女にもわかっている。だがそれを考えたところで仕方がないし、稲はきちんと育っているのだ。
「そう言われてもねえ」
溜息を吐くような声に、翁はやれやれと首を振ってぬるい風に肩を竦めた。
なにをするべきかもわからないのに、そんなことに煩ってはいられない。子供らはきゃっきゃと笑いながらのびやかな手足を陽光に晒して川の浅瀬で魚をとっては遊んでいる。岩魚だとか山女魚だとかがぱたぱたと尾ひれを河原の石に叩き付けている。山には実りも多い。川には魚もおる。雨が降らず稲がとれなくなったところで食べるものがそうそうなくなるわけもない。毎日のことをすべく川に降りた女は、そこでふと川に流れる清水の嵩が、いつもより減っているような気がした。
雨はまだ降らない。ひたすらに暑いだけの日々が続いた。


睦月 晦日

稲は高く背を伸ばし、日々成長していくのが目に見えてわかった。
自らの田を見に来た男は、しかしあることに気が付いてあっと声をあげる。瑞々しい葉の下、本来ならば滔々と水があるはずの地面は陽光の熱にあてられてひび割れている。
「さては、誰か水門を閉めたな」
近所の悪餓鬼が悪さでもしたか、他の奴が取水門を閉めて自分のところに水をたくさん届けようと欲でも出したか。
まったく、と男は水門のところへ歩きだす。まあ水門の板を開けるくらい、大した手間でもない。怒りをこめながらどすどすと土手を歩いて、そうして川を見て、今度はもっと大きな声でうわっと言った。
川の水が濁って、ひどく量が減っている。そのせいで取水門にまで水が届いていなかったのだ。
「た、大変だあ」
雨が降らなくなって、ふた月ばかり経ったころだった。
男は鍬を放り出して村の戸を叩いて回り、誰もがひび割れた土に打ちひしがれることとなる。


文月 某日

「雨乞いじゃ」
川の水は泥色に変わり、それまでの清流はどうしたのかというほど。目に見えて水が足りないという事実に誰もが暗い顔をしている。
「だから雨が降らんのはおかしいと言っておったのに」
「そんなことを今言っても」
「雨乞いは誰がする」
「雨乞いで雨が降るんかのう」
てんでばらばらなことを言いだす村人に、一番の年寄りは溜息を吐いた。どうにもままならない。
「雨乞いはもう頼んだ。祈祷師にお願いしとる」
しわくちゃの顔を歪めて言うのに、おおと声が上がる。
「とりあえずは一安心じゃ」
「しかし水はどうする。また汲むのか」
「井戸水を使うしか……」
再びごちゃごちゃと言い合いを始めるのはもう収まりそうになかった。誰もがこの先をおそろしがっている。蓄えがあるとは言いにくい小さな村。稲が枯れるようなことあらば言うまでもなく山の幸も期待はできない。川が干上がれば魚も消える。木の皮を食い草の根を食って食いつながねばならないかもしれないが、その先に待つは夏よりもおそろしい冬の季節だ。
日は強く照り付けている。粘土質の土はからからに乾きひび割れて、ただ蝉の音ばかりが憎らしく響いていた。


葉月 朔日

「雨乞いなんぞ!」
頬のこけた青年が八つ当たり気味に言うのに、数人がそうだそうだと同意した。井戸はすっかり干上がり、川にも池にも煮詰まって泥色をした水ばかりがほんの少し流れているだけである。飢えて死ぬ前に乾いて死ぬ、その思いが誰もにあった。
雨が降らなくなって三月は経った。雲すらない晴天に木々もすっかり葉を落とし、飢えと渇きが際限なく続く。これが生き地獄でなくてなんだというのであろう。
聞くに近隣の村々も同じであるらしい。
「もう牛馬を殺して食うしかねえ」
「あんたんとこの馬ももう死ぬだけだろ、だったらなあ、なあ」
痩せた馬では雨が降っても役にはたたない。悲しげな目をした痩せ馬は、立つこともままならず静かに飼い主の男を見ている。結論のはっきり見えた逡巡を経て、ついに男は頷いた。
「ごめんなあ」
二人、三人と馬を囲う。一人が馬の上に乗って抑えつけようとする。苦しいと鳴く馬の声はひどくか細い。ごめんなあ、ごめんなあ。身動ぎできないほど弱った馬の、痩せて固い首に鎌を当てて男らは思いっきり肉を引き裂いた。
断末魔の声さえ上げずに息絶えた、その血を啜る。垢の浮いた頬にべしゃべしゃついた血は、たとえどんなに生臭くとも貴重な水分だ。だくだく落ちていく血を少しも逃がすまいと桶を手に抱えて男らは薄ら笑いを浮かべる。これで命が僅かに伸びた。
てらてらと肉色の断面を呈する馬の首がごろりと空を見ていた。どこにも焦点の合っていないそれは、自らを殺した男らでさえも見ていない。むしろ僅かに、地獄から抜け出たという安堵の色さえ見えるようだった。
肉は筋ばっていてひどく固い。泣くことさえ水が抜け出ることを恐れてできない男らはもくもくと馬の死肉を貪った。むっと立ち上る血の生臭さと、男らの垢で饐えた匂いとが狭い馬小屋にひどく充満していた。


葉月 某日

それを見た時、村の男らに過ったのは奇妙な期待だった。
弱い老人から、子供から、飢えて死んでいく。とうに水を運ぶ元気もなく、そもそも運ぶ先の稲もとっくに枯れて茶色い穂先を風に揺らしているだけだ。折角水を運んでいたのにという思いはとうにない。そう思うだけの気力もないのだ。誰もがこけた頬とぷっくりと膨れた腹をして、絵巻物に出てくる餓鬼そのものの人々は日の光を厭うてか表には人っ子一人出ることもない。
あまりにも飢えた人というのは鬼よりおぞましくなるらしい。骨が転がっておる。小さな子供の頭蓋も転がっておる。男が我が馬にしたように、同じことをか弱い子にした者が少なからずおるのだ。それが死んでしまってからその血を啜り皮を齧り肉を削り骨を舐めたのか、それとも自ら手を下したのか。それを知る余裕など男にはなかった。その昔都で病と飢餓が流行れば六条河原に腐った死体がごろごろ溢れたと聞くが、このような田舎では死体すら残らないものらしい。
雨は降らない。ただひたすら憎らしいまでの青空が広がっている。遮るものもない日光が惜しみなく降り注いでいる。骨と皮ばかりになった女がずるりと地面を這って、ひどく爛れた肌を晒している。それを横目で見ながら、立ち上がることも億劫と男は目を閉じる。ほんの三月前まではうつくしい水を湛え子供らが楽しげに遊んでいた川にはもう泥水さえ流れてはいない。ぱりぱりに干上がった地面が割れて剥がれて、魚の朽ちた死骸がところどころに散らばっていた。
地獄でさえこうも恐ろしくはないだろう。悲鳴すら出ない静かな死が村には満ち満ちて、こうして息をする瞬間に誰かが死んでいく。呼吸もままならない飢えに、男が身を委ねようとした時。
「うわ、すっげえ」
声が、した。
目を開ける。なけなしの力を振り絞って。
乾いて風に吹かれそうな小さな胎児の遺骸を前に、長く見ていない鮮やかな緑色が翻る。ぼやけた視界の真ん中に、いかにも元気そうな子供が鮮やかな橙色の目を煌めかせて立っていた。
誰だろう、誰だったろう。こんな子おったろうか。最早ほとんど動かない思考で子供を見る。その視線に気が付いたのか、子供は男をぱっと見ると八重歯を剥き出しにして快活に笑った。この地獄にいかにも似つかわしくない騒がしさを秘めた子供だ。
「なんでこんなんになってんだ?」
問う声は誰に向けたものか。少なくともここで今まさに死に向かっている男に対してではなかろう。
ひゅっとほんの少しも水気を含まない風が吹いて、子供の羽織を大きく巻き上げた。
「あんたはなんだ」
しゃがれた声がした。屋内に身を潜めていたらしい、ぼろぼろの布を身に着けた男がよろよろと痩せこけた手足を引き摺りながら炎天下に姿を現した。まだ若いだろうに、顔はげっそりとやつれ、弛んだ皮膚のせいで深い皺が刻まれている。この先二度ととれないであろうおそろしげな皺のせいで老人にも見える男に、緑髪の子供は臆することもなくあっさりと言葉を返した。
「あんたはなんだ?そういうあんたは何なんだ?おれは天邪鬼だ。ほら、あんたはなんだ?」
天邪鬼と言った子供は何がおかしいのかくつくつ笑う。このうえもののけも出てくるだなんて、ますます末法の世である。
腕一本動かせない男は薄目を開けて彼らを見ている。太陽が痛いほどに照り付けている。死肉を食ってか、こんな時でもやけにふくふくとした烏が頭上でかぁ、と鳴いた。男が死ぬのを待っているのだろう。
「天邪鬼がなんの用じゃ。わしらが死ぬのを見に来たか。それとも雨でも降らせてくれるんか」
子供の問いには答えず男は一方的に言葉を紡ぐ。それに気を悪くしたのか、緑の子供はむっと顔を顰めて橙の眼光を強くした。
「お前、雨乞いをしても無駄だったんにこんな若造にゃ無理だろう、と考えたな」
ひ、と引き攣れる声がした。
「名のある祈祷師でもなんにもできなかったんにこんな気狂いの小僧っこが何をできるか、と考えたろ」
ううっ、漏れる声は苦悶に満ちている。真直ぐ若者を見る子供の言葉が真実であると暗に認めているようなものだった。
太陽はじりじりと地を焼いている。乾いた空気が肺を焦がして、吐いた息にさえ湿気のすこしも交じってはいない。水がない。口腔はからからに乾いていて、目の前に死が迫っている。
「覚り持ちがぁ」
獣の唸り声に似た暗い音で男が言う。子供はどこまでもにやにや笑って、「えーっと、後ろにふたり」言って首だけで振り向いた。
せむしの男と、蛆だらけの子を抱いた女が子供に胡乱な目を向けている。今にも死にそうな長い長い息を吐きながら、このいかにも快活そうな子供は何なのかと疑っている。
「そんで、あっちの家にひとり」
言われた途端にがたりとこちらを窺っていた戸が閉まる。暗い室内にさっと引っ込む姿は人より鼬か貉に近いようだった。
「人、少ねえなあ」
呆れたように言う。もはやどれを人と数えているのかもわからないが、子供はひとつふたつと指折り数えて、それが両の手を超えるか超えないかといったところで子供はつまらなさげに数えるのをやめた。
「おれ、さっき生まれたばっかなんだ。誰かに乞われて生まれたんだけど、こんなとこじゃ乞われるもなんもないよなあ」
子供が笑うと八重歯が覗いた。両手を広げてくるくる回る姿はいかにも生死の苦悩から自由に見えて、ほんの少し前まで自分らもそうだったことを死に体の男は思い出す。
「あんた、雨降らせられるんならはようお願いします」
うわんと蝿の集り蛆が這いまわり腐汁の垂れた小さな遺骸を、まるでまだ生きている子にするようにあやしながら、ぷっくり膨れた下腹をゆさゆさと揺すって母親が言う。ひどく細い腕がそれだけは放すまいとただの肉塊となったがらんどうの我が子を抱いて、雨さえ降れば助かるのだと信じ込んでいるらしい。
「そうじゃ、雨を」
「降らせられんのなら出ていってくれ」
「あんたが何者か知らんが降らせられるんだろ」
「そない立派なべべ着てからに」
枯れ枝より細く骨にぴたりと皮が張り付いた腕がかわるがわる伸ばされて、子供はいかにも嫌そうな顔をしてそれら全てを払いのけた。
「やだ」
はっきりとした声が死にかけの耳朶にやたらと強く響いた。
「都合のいいことばっかり並べやがって。おれは天邪鬼だぞ。お前らの言うことなんて素直にきくもんか!」
あかんべえと出した舌がやけにあかあかとしている。それでも縋りつくしかない人々の腕が伸ばされる。指先の肉さえすっかり削がれたような骨だらけの手に一度捕まれば振りほどくことは叶わない。離せ、だとかやめろ、だとか言って散々暴れるが死にかけとは思えないほどの力がぎちぎちとその健康的な腕を握りしめる。落ち窪んだ目玉が、皺だらけの顔が、ぞっとするほどに骸骨のような顔をして子供を捕えている。
「くそ、くそ死にかけのくせに」
蝉の喉さえ焼く太陽光線が頭上から絶え間なく降ってくる。子供のこめかみにつと汗が伝った。どうしようもない餓鬼の群れが救いを、救いをと藁より細い蜘蛛の糸に手を伸ばして暗い眼窩を窪ませている。ふと、ほんの数ヵ月前に笑いあっていた日々が死にかけ地に横たわる男の脳裏に過って、いよいよ死が近いのだ、とほんの少しも動かせない喉を震わせた。
子供はなんとか人だかりから脱出しようともがいている。
「やめい」
まだ張りのある声が皆の鼓膜を震わせる。と、途端に天邪鬼がするりと人々の隙間を抜け出した。
「子供に何をしておるか、見苦しい」
白髪の混じりはじめたらしい、胡麻塩頭の老爺だ。それが餓鬼の群れをたしなめ、憐れみの目を向けている。
「なんだ、じーさん」
「あんた、天邪鬼だろ」
「そーだよ」
老爺は足取りもしっかりして、痩せ細ってはいるものの子供をしっかりと見つめている。そうして緑の羽織をひっかけた子供の様相をまじまじと見て、額に生えた小さな一本角に目をとめ、よくよく熟考してから口を開いた。
「よいか、我らはこうして生き仏になるために断食をしておる」
誰も聞いたことのない言葉に誰もが言葉を失う。失って、老爺と子供をぎょろぎょろとした目玉で見ている。
「ここで雨が降れば我らの思いが報われぬ」
老爺は構わず言葉を続ける。天邪鬼は怪訝な目をして老爺を見、けれどその口からは一片の言葉すら飛び出すことはない。人の心を覚るはずの目がじっと老爺を見つめ、しかし何も言いださないのはその言葉に嘘を感じ取れていないからだろう。
誰もが驚きをもって老爺を見ている。飢えに苛まれた体でじっと佇んでいる。
「絶対にだぞ、雨を降らせてはいかんからな」
「いやだね」
子供の声はもはや反射とでも言えるものだった。考えるより先に反対せねばならない性質であるらしい子供は老爺を強く睨みつけると、天を仰いで大きく息を吸った。
「雨雲、来い!」
突き刺さる白光が、たちまちのうちにどこからか現れた黒雲に覆われた。薄く影の落ちる地面に誰もが空を見上げる。数ヵ月の間、一度も見ることが叶わなかった光景がそこにあった。
雲が濃い陰影を描いて墨を塗り重ねた色をしている。それが空一面に立ち込めている。
「雨よ降れ!」
子供が言った途端にぽつ、と地面に黒い円が落ちた。
円、円、円。
それが重なりあい潰しあいついに地面全てが黒く染まり、その頃には大粒の雨が地面をばたばた叩いていた。
「雨じゃ……」
茫然と誰かが呟く。その些細な言葉は雨の中を伝播していき、誰もがようやく雨が降っているのだと認識しはじめた。
「神」
「神様だ」
「雨を恵んでくださった」
雨音の中でざわざわと囁き合う人は誰もがようやく息をすることを思い出したらしい。腐った子を地面に落として女は両手を天に掲げ、肉のすっかり落ちた手で雨を掬い取っては口をつけた。家々から桶を引っ張り出した男らはそれに縋り付いて溜まっていく雨水を見ている。
胡麻塩頭の老爺は満足げに天邪鬼を見る。自らもずぶ濡れになりながら子供の前にすっくと立ち、空っぽの胃を抱えてなお毅然と天邪鬼に対峙する。
言葉は、誰の耳にもしかと届いた。
「緑の衣に緑の髪。貴方様の名を翠と封じ祀らせていただきましょう」
聞いた途端に子供の橙色の瞳がひどく悔しげに歪む。この老爺は自分の心さえすっかり騙して、天邪鬼に反対のことをさせたのだ。そうしてここの土地に封じて守らせてしまおうというのだ。
「お前、嵌めやがったな!」
そういうもののけの叫びを聞きながら、地面に横たわる男は一度ぶるりと身震いして、そうしてごくごく当たり前に息を引き取った。
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